パーフェクトなDRMは不可能

地上波のコピー制御には意味がないと。

 もっと言えば,デジタル技術へのコピー制御自体に意味がありません。どんなに一生懸命仕組みを整えても,必ず抜け道が作られてしまう。

 デジタルのコピー制御の難しさを示す言葉としてBOBE(Break Once Break Everyday)というものがあります。一度,コピー制御を解除する仕組みが出来上がってしまえば,それが一夜にして世界中に広まってしまうという意味です。DVDなどがその分かりやすい例でしょう。

 残念ながら,パーフェクトなDRMはできない。それを前提とした上で,なるべく破られにくい,または破られても被害の少なくなるような仕組みを取り入れるという考え方を持つべきです。

コピー制御の導入を主張したのはどの放送事業者だったのでしょうか。

 資料などを探ってみると,2001年6月,サーバー型放送に関する技術的要件の一環として情通審の諮問にかかり,翌年3月の情通審一部答申で総務省省令が改正された際,「地上デジタル放送についても同じ技術を使うのが適当」との見解が出されたのが始まりです。

 しかし,誰が,いつ,どのような理由でB-CAS利用を主張したのかははっきりしません。ただ,民放の技術者がご執心であったとは聞いています。

 また,1999年ごろの段階でB-CASシステム用の回線センターが準備されていたという話も聞きます。地上デジタル放送が決定したのが1998年。かなり早い時点に,BSすら開始されていない段階で100億円規模の投資をしていたそうです。こういった部分を含めて,そのプロセスは不透明な部分があると思います。

B-CAS問題を含め,放送業界全体が進むべき方向性についてどう考えますか。

 2011年の完全デジタル化に向けて作業を進めていかなければならない現状において,B-CAS問題やコピー制御などは優先性の低い問題です。今はいかにテレビを切り替えてもらうか,またそのコストをいかにして抑えるかに全力を注ぐべきでしょう。

 加えて,B-CASやコピー制御は地上デジタル放送自体にネガティブなイメージを与えており,早期に払しょくする必要があります。

 「地デジは放送・通信を融合するもの」というポジティブなイメージを促進するためにも,B-CASならびにコピー制御は直ちに廃止すべきでしょう。つまり,デジタル放送の魅力を高めるために,デジタル放送の魅力を損なうものは排除する---。総務省がとるべき政策は,明らかです。

■変更履歴
コピー制御の難しさを示す言葉としてBOSEとしていましたが、正しくはBOBEです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/09/11 17:25]