システムへの理解向上を進める,工事進行基準適用も支援

NTTデータ社長を経て、情報サービス産業協会(JISA)の会長に就任し、1年強が経過した。情報システムへの理解を高めることと、2009年4月から適用の始まる、ソフトの受託開発の工事進行基準適用に関するSIerへの支援が、今年の活動の中心だと明言する。中長期的には、エンジニアのスキルレベルを向上させるための取り組みが重要だと指摘する。

JISAの会長に就任して1年が経ちました。

 会長になった時、どうも情報システムの世界のことが理解されてないんじゃないかということを話しました。システムがどういうもので、これからどうしていくのがいいのかといった点について、もっと情報発信していく必要があるだろうということです。

 この考えは今も変わりません。今年も継続していきます。

情報システムの信頼性についても熱心に説明されています。

 大規模なシステム障害が相次いだこともあって、システムの信頼性の在り方が、当時は大きな問題になっていたわけです。政府が信頼性向上に関するガイドラインを公表するほどでした。

 ですが、情報システムに求められる信頼性というのは一律ではありません。このことを理解してほしいのです。

信頼性に対する理解も進んでいませんか。

 重要な社会インフラになっているシステムには相当高い信頼性が求められますが、企業のシステムには1~2時間止まっても、それほど大きな影響が生じないものがあります。半日ぐらい止まっても問題ないシステムもある。こういったことは明確にした方がよいのではないでしょうか。

 JISAでは情報システムの信頼性の指標作りを進めてきました。これから1~2カ月で公表できると思います。

システムを作る側の団体が、信頼性について議論すると、責任逃れのように聞こえませんか。

 システムに必要な信頼性を指標化できれば、今までシステムのテストに投じていたコストを、運用やバックアップ、利用部門の満足度の向上にために利用することができます。システムが過剰品質になっているとすれば、お客様のためにもよくないでしょう。この辺りについて、バランスの取れた議論を広げていこうということです。

ITに限りませんが、日本企業には、信頼性や品質を追求して成功してきた歴史があります。

 確かに高品質、高機能ですが、日本の情報システムは、今のままでは、世界のどこに持っていっても使えない状況になってきている。現実には、市販製品を組み立ててシステムを作りたいと考える企業が多いわけです。

 実際に欧米のベンダーは、パッケージ・ソフトなどで、ニーズに応えるものを売っているのです。世界が相手ですから、何百社という単位で製品が売れる。日本の特注品は残念ながら売れない。このことは理解する必要があります。

品質の低いものを認めるべきだということですか。

 日本のテレビを見ていると、しばしばシステム障害について報道している。同じように新幹線のダイヤが30分遅れてもニュースになります。この感覚のままでいいのか、もう少し寛容になるのか、どちらを選ぶのかは、重要なことではないでしょうか。

日本のSIerのビジネスが減ることになりませんか。

 一時的に、仕事は減るかもしれませんよ。ですが、特定の企業だけが使って、5、6年したら廃棄していくものではなくて、たくさんの企業に使ってもらうシステムを作る。既存のソフトを利用しながら、バージョンアップしていく方が、開発する側にとってもやりがいがあるはずです。