写真●米ヴイエムウェアのラグー・ラグラム氏
写真●米ヴイエムウェアのラグー・ラグラム氏
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 仮想化のマーケットリーダーであるヴイエムウェア。7月22日(米国時間)に発表した「VMware ESXi無償化」のニュースは、ユーザーやベンダーに大きなインパクトを与えた。この時期、なぜ無償化を進めたのか。「仮想マシンこそがアプリケーションを稼働させる最適な場所である」。こう主張する米ヴイエムウェア 製品・ソリューション担当のラグー・ラグラム バイスプレジデントに、今後の製品戦略を含めて聞いた。 (聞き手は森山 徹=日経コンピュータ)

なぜ今、VMware ESXiの無償化に踏み切ったのか

 理由は三つある。最初に、仮想化をすべての場所で使ってもらいたい、という私たちのビジョンがある。これまでも「VMware GSX Server」などを無償にした経験がある。これは、GSXからESXにビジネスが移行したことを踏まえての判断だった。同様に最近、ハイパーバイザーから、その上で稼働する各種ツール類に焦点が移行してきた。この流れで、ハイパーバイザー機能のみを備えるVMware ESXiを無償化した。

 次にタイミングだ。ESXi向けのアップグレード(Update 2)が用意できた。ハードウエア・モニタリングの強化などにより、管理性が高められる。最後の理由は、仮想化そのものについて認識が広がったきたところで、もっとVMwareを試してもらおうと考えたからだ。ハイパーバイザーを使ってもらい、その上の高度な機能が必要な顧客には、各種ツール類を提供する。この流れで、仮想化市場がより拡大すると見込んでいる。

ESXiを含めた製品ポートフォリオは

 ポートフォリオは大きく、データセンター向けとデスクトップ向けがある。どちらもハイパーバイザーという共通基盤上にあることがポイントだ。

 仮想化技術を導入しているユーザー企業は加速度的に増加している。私たちの顧客は世界中で12万を数える。その77%が、従業員数1000名未満のスモール・ビジネスの領域だ。中小企業から大手まで普遍的なテクノロジーを提供できることがヴイエムウェアの強みだ。

 私たちはハイパーバイザーを提供する企業として古くから知られている。その上に、VMotionに代表される各種ツールを合わせて提供している。これが「VMware Infrastructure」だ。現在、こうしたツールは20製品ぐらいある。これを来年度には2倍に拡充する計画だ。データセンター向けでは、可用性向上、電力管理、リソース管理、アプリケーション管理などの機能を提供し、バーチャル・データセンターを実装するために必要なすべての機能をカバーしようとしている。

 デスクトップ向けでは、サーバーの仮想マシン上で稼働させているデスクトップを、クライアント上の仮想マシンにシームレスに移行させるためのツールなどを検討している。詳細は9月のプライベートイベント「VMworld 2008」で発表する予定だ。楽しみにしていてほしい。

サーバー仮想化の用途は認識されてきたか

 仮想化の導入には段階がある。まずは開発環境を仮想マシンとして提供する段階がある。次にサーバー統合プロジェクト。さらにそれらのサーバーをひとまとめにして仮想化コンピュータを構築し、キャパシティ・オンデマンドを可能にする。進んだ顧客は、こうしたコンピュータ・クラウドでコンピュータを運用している。いわば、エンタープライズ・クラウドだ。

エンタープライズ・クラウドとは何か

 現在、ヴイエムウェアのユーザーは社内インフラを統合して、様々なエンタープライズ・システムのインフラとして活用している。自分の利用している仮想マシンはどのサーバーにあってもかまわない。これがコンピュータ・クラウドの姿だ。

 サービスプロバイダーでも同様のことが起きている。唯一の違いは、サービスプロバイダーは外部の顧客にサービスを提供していることだけ。だから将来は、エンタープライズのインフラと、外部のクラウドがシームレスに連携できるようになる。そうなると、状況に応じて、仮想マシン上のアプリケーションをローカル(社内)で走らせるか、クラウド(社外)で走らせるか選べるようになる。

「サーバー統合」がゴールではないと

 サーバー仮想化ソフトは単なる集約のツールにとどまらない。仮想化技術はデータセンターのアーキテクチャそのものとして使える。ソフトウエアのライフサイクルマネージメントやプロビジョニング、BCPなどが実現できる。

 サーバー統合は仮想化を使う大きな理由の一つだ。しかし今、それが変わりつつある。仮想マシンこそがアプリケーションを走らせる最適な場所だと考えられてきたのだ。

 アプリケーションの可用性を向上させることを考えてみよう。アプリケーションを仮想マシンで実行するなら、VMware Infrastructureに組み込まれている高可用性機能が利用できる。サーバーが落ちたら、別の場所で仮想マシンが自動起動される。アプリケーションのトラフイックが過剰になれば、リソースに余裕のある別のサーバーにダイナッミックに移動できる。こうした仕組みにより、いつでも十分なリソースが与えられ、サービスレベルが保たれる。これを物理環境でやろうとすると、とても複雑な仕組みが必要になる。

 また、仮想マシンを導入しておけば、これまでより強力なハードウエアが出たときに簡単に移行できる。スケールアップが容易なのだ。さらに、仮想環境のセキュリティも強固になりつつある。この分野では、「VMware VMsafe」という新しい製品を投入した。サービスレベルや拡張性、セキュリティ面など、仮想マシンでアプリケーションを動かすメリットは大きい。