おわびと内部調査記事については?

 新聞社が1面で謝罪して、特集2ページを割いて検証記事を載せたこと自体は画期的で、反省の表れだと思う。ただ残念なのは、記事を読んでも「チェックが杜撰(ずさん)だった」ということが分かるだけで、コトが起きた経緯は不明なままだし、説得力のある改善策もない。そして識者の口を借りるような形で、「匿名ネット社会の暗部がただごとではない」と批判している。これでは「頭を下げるフリして舌をだしている」と受け取られてしまう。

 6月28日におわびと処分を発表した時も、「違法行為には法的措置を取る」とやって反発を買ったが、1カ月たってまた同じコトをやっている。これでは静まるわけがない。

ネットユーザー側の“戦い方”に変化が見られる。

 一つはまとめサイトの活用が挙げられる。後から事件を知った人でもすぐに時系列でコトのいきさつを把握して、“怒りの輪”が簡単に広がっていく。また、都合の悪い記述を削除しても“魚拓”に取られ、対応の不手際は記録されて履歴として残る。そんなまとめサイトにブログなどからリンクが集中すると、企業名で検索した時にSEO効果でまとめサイトが上位表示される。話題が下火になっても、検索結果上はなかなか風化しないことになる。

 もう一つは、企業の弱点を突く行動と言うか、やられたら嫌なことがネットの集合知で明確になり、ただのガス抜きで終わらずに、行動が一定の影響を与えるようになったこと。“成果”を上げるのが難しい不買運動ではなく、広告主への抗議・問い合わせに向かったのが、企業としては痛かった。

 この点は、倖田來未さんの「羊水」発言事件と構図が似ているように思う。あの時も倖田さんのCD不買ではなく、CM出演企業に抗議がいったことが致命傷になった。女性を敵に回したことも共通している。

企業はネットとどう付き合えばよい?

 変に構えたり媚(こ)びたりする必要はない。2ちゃんねる利用者(=2ちゃんねら~)の数が800万~900万人に上るというから、特殊な層ではなくフツーのネットユーザーだ。会社の若手・中堅社員の中にもいるはず。

 犯行予告を書き込むような不届き者がいれば、それがイタズラでも逮捕されるのだから、違法な書き込みがもしあれば粛々と対処すればいい。

「ねら~=サイレントマジョリティー」であると…。

 「2ちゃんねる=悪」「2ちゃんねら~=ニート、ネット右翼」といったステレオタイプな認識のまま、一個の特殊な人格と見なして対峙しようとするからおかしなことになる。彼らが怒っているとしたら、それはフツーのネットユーザーが怒っているということ。自分に非があるか、説明不足で誤解されているかどちらかなのだから、おわびするか、誤解を解くように説明を尽くすかすればよい。そこらへんの空気、風を毎日新聞は読めていない。

風の息づかいを感じていれば防げた…?

 おわび文の作成や検証委員会に、広告主へのおわび行脚で苦労した広告営業部員や、「若手ねら~社員」が加わっていたら、もっとまともな内容のものが出来上がっていただろう。モニター画面の向こう側にいるユーザーの心理や求めていることをしっかりとらえて、それに応える必要がある。

 不祥事が起きてしまったら、謝罪をして対応に当たるのは当然として、それを消費者によく見える形で伝えることも大切だ。せっかくWebサイトがあるのだから、新たな事実を把握した段階で適宜リリースを打つなどすれば、「“中の人”はしっかり対応している」というメッセージになり、怒りを和らげることにつながる。

 あとは謝罪をすぐに引っ込めないこと。事件・事故を起こしてしまった企業のWebサイトは、事後対応の事例として学ぶところが多い。

 騒動は遅かれ早かれ終息するが、うやむやに終わらせた場合は、ことあるごとに前例を持ち出されて批判される。沈静化というより悪評の定着・一般化になってしまう。企業は、強力な監視能力を持つネットユーザーの存在をもっと認識した方がいい。