電子マネー「Edy(エディ)」を運営するビットワレットの宮沢和正・執行役員常務

 電子マネー「Edy(エディ)」を運営するビットワレット(東京・品川区)がポイントサービスを強化している。7月上旬に、携帯電話(おサイフケータイ)内蔵のEdyによる支払金額に応じたポイントを、複数の提携先のポイントとしてためられる「Edyでポイント」サービスを始めた。現時点では、全日本空輸(ANAマイレージクラブ)、楽天(楽天ポイント)、千趣会(ベルメゾン・ポイント)の3社と提携。8月から秋にかけて、KDDI(auポイント)、ヤマダ電機(ヤマダポイント)、Tカード&マーケティング(東京・渋谷区、Tポイント)の3社との提携が決まっている。

 「Suica(スイカ)」や「nanaco(ナナコ)」「WAON(ワオン)」といったほかの主要な電子マネーは、「Suicaポイント」など自社独自のポイントをためられる方式を採用しており、Edyの方式は異色だ(関連記事)。利用者は自分が普段ためているポイントをためられる半面、設定が分かりにくいなどの懸念材料もある。

 新サービスの狙いについて、ビットワレットの宮沢和正・執行役員常務に聞いた。


新サービスの狙いは?

「Edyでポイント」の携帯電話画面。ためられるポイントを選択・設定できる

 「Edyポイント」ではなく、「Edy“で”ポイント」にしたのがミソだ。既に楽天ポイントなどほかのポイントをためている人にとって、Edy独自のポイントがたまってもうれしくないだろうと判断した。

 (競合の流通系・交通系電子マネーと違って)当社は小さい会社で、店舗など顧客との直接の接点を持たない分、利用拡大に苦労してきた。現在の提携先6社の延べ会員数は約1億3000万人に上る。この顧客層に対して、提携先にEdyの告知をしてもらえるメリットは大きい。ポイント原資や告知費用の負担割合は、当社と提携先で個別に決めている。

 現在の6社で、「消費者がためたいポイント」に関する各種調査で上位10社に入る企業の半数は押さえた。今後も提携先を増やしていく方針だ。

従来の全日空(ANA)との提携関係との違いは。

 ANAとの提携関係は新サービスの原型になっている。2003年からEdyを使うとANAのマイルがたまるサービスを始めていた。これは利用者拡大に大きな効果があった。実際に、ANAのマイルがたまる取引はEdyの全決済件数のうち約4割を占める。

 ただし、マイルをためるのは、飛行機を頻繁に利用する20代~40代の男性を中心とした層に偏っていた。今まで取れていなかった層を押さえるために、ANAとの提携を横展開し、楽天や千趣会のような女性の利用が多いポイントをためられるようにしようと考えた。

利用者はポイントをためる対象を6社から選べて、いつでも変更できる。6社間でポイント付与率などについて競争が起きるようなことはないのか。

 提携先の6社にとって、競争の懸念はあるだろう。ただし、それ以上に各社のポイントを活性化できる効果や、Edy利用者を新規利用者として取り込める効果のほうが大きいと評価していただいている。それに、当社としてはなるべく顧客層が重複しない企業と提携している。

システム構築の費用は。

 1億円を下回る程度だ。ハードウエアへの投資は少ないが、各社のポイント管理システムと当社のシステムをそれぞれ同期させる部分の細かな設計は難易度が高かった。細かな例外処理もたくさんある。

「おサイフケータイEdy800万台はまだまだ少ない」

新サービスは携帯電話でしか使えない。

 ボタンや画面がないカード型のEdyでは、6社を選択する操作はできない。カード型でも「フェリカポート」(パソコンに内蔵しているEdy読み取り機)などを使えば技術的には可能だが、携帯電話が一番分かりやすいと考えた。

 携帯電話での電子マネー利用を促したいという狙いもある。おサイフケータイは5000万台以上普及しているのに、Edyはそのうち800万台でしか使われていない。今回のサービスは携帯電話でEdyを利用する大きな動機になるはずだ。2007年は「電子マネー元年」と言われたが、2008年は振り返ると「おサイフケータイ元年」だったと言われることを目指している。