「仮想化技術をオープンにするのが,我々の役目だ」。ハイパーバイザー・ベースの仮想化ソフト「XenServer」を擁する米Citrix SystemsのGordon Payne氏は,同社が米Microsoftの「Hyper-V」や米VMwareの「ESX Server」といった,他社製ハイパーバイザーとの相互運用を重視していると強調する。6月にリリースしたばかりのデスクトップ仮想化ソフト「XenDesktop」でも,他社製ハイパーバイザーを利用可能にすると語る(聞き手は中田 敦=ITpro編集)。



米Citrix Systems Senior Vice President Gordon Payne氏
米Citrix Systems
Senior Vice President
Gordon Payne氏
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 2007年にハイパーバイザー・ベースの仮想化ソフト「Xen」の開発元であるXenSourceを買収したCitrix Systemsは,「ESX Server」を擁するVMwareや,Windows Server 2008の標準仮想化技術となった「Hyper-V」を擁するMicrosoftに並ぶ,仮想化ソフトの有力ベンダーである。Citrixは買収したXenの技術を使って,サーバー仮想化ソフトの「XenServer」を販売するだけでなく,デスクトップ仮想化ソフトの「XenDesktop」も開発した。

 XenDesktopは,Xen仮想マシンを使ってサーバー上で「Windows Vista」を複数動作させ,サーバー上で動作するWindows Vistaの画面を,シン・クライアントやWindows/Macパソコンを使って遠隔操作するというソフトである。画面の転送技術には,同社の「XenApp(旧名称はCitrix Presentation Server/MetaFrame)」で実績のある「ICA」を使用している。XenDesktopによる最大のメリットは,クライアント・パソコンを集中管理できるようになること。同社では大企業を中心に,XenDesktopが採用されると見ている。

XenDesktopの売れ行きは?

 現在,20~25社のユーザー企業が,XenDesktopのテストを開始している。2008年下半期には,数千ユーザー単位で導入する企業が現れる予定だ。当初は,金融機関や医療機関,高等教育機関などで採用が進むと見ている。

XenDesktopは,どのようなユーザーに向けたソリューションになるか?

 我々は,エンドユーザーを彼らの「働き方」によって分類している。例えば,コールセンターや小売業の店頭などで勤務し,決められた仕事(タスク)だけを日々行う従業員。彼ら「タスク・ワーカー」の働き方や業務は定型化しているので,限られたアプリケーションの画面だけをシン・クライアントに配信するXenAppのようなソリューションが向いている。

 一方で企業には,働き方や業務が定型化されていない職種も存在する。金融機関や医療機関の専門職やエンジニアなどがそうで,彼らのことを我々は「ナレッジ・ワーカー」と呼んでいる。彼らはシン・クライアントではなく,様々なアプリケーションが利用できる「パソコン」を求めている。

 XenDesktopは,サーバー・ルームで集中管理されたデスクトップ環境をユーザーに提供するソリューションであり,ナレッジ・ワーカーのニーズに応えられる。それでいて,エンドユーザーが使用するアプリケーションやデータを,サーバー・ルームで一元管理できるので,セキュリティを確保したいユーザー企業の要望にも合っている。

 またXenDesktopは,パソコンのハードウエアをサーバー・ルームで集中管理できることも魅力の1つだ。エンドユーザーが使用するシン・クライアントは,CPUファンも無ければ,ハードディスクも搭載されず,消費電力も少ない。パソコンのような廃熱も無いので,オフィスの空調コストを削減できるだろう。

Citrixは5月に開催したカンファレンス「Citrix Synergy」で,ハイパーバイザー型である「XenServer 4.1」では,仮想化による性能劣化が8%にまで少なくなったと発表している(Virtual Serverのようなホスト型の仮想化ソフトでは,性能劣化は40~60%に達していた)。ハイパーバイザー型の仮想化ソフトは,技術として成熟の域に達したのではないだろうか。

 我々もそう考えている。今後我々は,仮想化ソフトを管理(マネジメント)する技術の提供に力を入れていく。その際に重要になるのが,ハイパーバイザーをオープンに,相互運用可能にすることだ。

 当社の製品でも,仮想化ソフトのオープン化は進んでいる。XenDesktopでは現在,エンドユーザーに使用させるWindows Vistaをホストする仮想化ソフトとしてXenServerを使用しているが,今後はHyper-VやESX Serverも利用できるようにする。

 また我々はMicrosoftと連携して,XenとHyper-Vを「プラグ・コンパチブル」にしようとしている。それぞれの仮想マシンの上で動作しているOSを,相互に移動可能にすることなどが主な内容だ。また,管理性の面でも,オープン化を進めている。米IBMや米Hewlett-Packardの管理ツールでも,XenServerを管理できるようにする考えだ。