米Motorola,NTTドコモ,英Vodafone Group,NEC,パナソニック モバイルコミュニケーションズ,韓国Samsung Electronicsの6社は2007年1月「LiMo Foundation」を設立し,携帯電話向けLinuxの共同開発を開始した。そして2008年3月,共通プラットフォーム「LiMo Platform」を公開した。LiMo Platformは携帯電話をどう変えるのか。LiMo Foundationの執行責任者であるエグゼクティブ・ディレクタ Morgan Gillis氏に聞いた(聞き手は高橋信頼=ITpro)

LiMo Foundationが設立されてから1年以上が経過しました。

LiMo Foundation エグゼクティブ・ディレクタ Morgan Gillis氏
LiMo Foundation Exective Director Morgan Gillis氏
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LiMo Powerd携帯電話の例,NTTドコモのP905iTV

 LiMo Foundationは米Motorola,NTTドコモ,英Vodafone Group,NEC,パナソニック モバイルコミュニケーションズ,韓国Samsung Electronicsの6社で結成しましたが,現在は40社が参加しています。2008年5月には米Verizon Wirelessや韓国SK Telecomなどのキャリアや,Mozilla Corporationのようなオープンソース組織も参加を表明しました。

 我々は最初のリリースを1年以内に出すことを目標にしていました。2008年2月には最初のバージョンとなる「LiMo Platform Release1(R1)」が完成,3月にリリースしました。APIも公開しており,デベロッパーはこのAPIに基づいてアプリケーションを開発できます。

 すでに実際の機種に搭載されています。2月にはスペインで開催されたMobile World Congressで,LiMo Powerdハンドセットとして18機種展示しました。日本ではNTTドコモのP905iやP905iTV、P705i、N905i、N705iなどがLiMo Powerd携帯です。

Linuxは携帯電話にどのくらい使われているのでしょう。

 NTTドコモの携帯電話はすでに5割以上がLinuxを搭載しています。英国の調査会社ABI Researchによれば,2007年の世界でのLinux携帯電話出荷は約1500万台。Linuxは最も急速に成長する携帯電話OSで,ABIは携帯電話向けLinuxの成長率は年75%を超えると予想しています。モトローラは昨年,2012年までには携帯電話の6割をLinuxベースにしていくと発表しています。

LiMoに加盟する企業のLinux携帯電話は,将来すべてLiMo Platformを搭載することになるのでしょうか。

 そう考えています。

LiMo Platformの開発はどのように行われているのでしょうか。

 LiMoの開発体制を,我々はコラボレーティブ開発モデルと呼んでいます。多くの会社が多くの貢献をしてくれています。例えばMotrolaは新しい技術を貢献しているのですが,アメリカにいるエンジニアがその仕事をしている。Samsungは韓国とインドにエンジニアがいます。もちろん日本にもいる。グローバルな分散環境の中で開発が行われています。また重要なのは,これらの技術は,製品ですでに実績がある,実証済みの技術であるということです。

知的財産の問題はどう解決したのでしょうか。

 LiMoを設立するとき,携帯電話は知財の観点から言うと課題の多い環境であることを実感しました。何かイノベーションを起こそうという時に,企業の持っている特許に抵触してしまうのではないかという恐れが付きまとっていたのです。

 LiMoでは,IP(知財)セーフハーバーという制度を作りました。LiMoに関わる企業が,LiMoに関わる技術であれば,他の企業に特許権を行使しないことを取り決めたのです。これにより,各企業が安心してイノベーションに取り組むことができるようになります。

 こういった仕組みを作ることが,携帯電話の世界に革命を起こす重要な要素だと考えています。

どの企業がどの部分を提供するのかという調整は難しかったのではないでしょうか。

 どの企業にも,必ず何か貢献する義務があるわけではありません。貢献したい企業は,プロポーザルを提出し,アーキテクチュアル・カウンシルが,今後のロードマップに互換性があるかどうかを評価し,受け入れるかどうかを決定します。