国内におけるiPhone 3Gの将来展望を専門家に聞くインタビューの第4弾。アクセンチュアの武田 智和 エグゼクティブ・パートナーは,iPhoneに国内の携帯電話シェアを塗り替えるほどの影響はないとしながらも,洗練されたユーザーインタフェース(UI)や米アップルのブランド力に可能性を感じるという。

(聞き手は松元 英樹=日経コミュニケーション



199ドル,日本で2万円強という価格に注目が集まっている。

アクセンチュア 通信・ハイテク本部 通信統括 武田 智和 エグゼクティブ・パートナー
アクセンチュア 通信・ハイテク本部 通信統括 武田 智和 エグゼクティブ・パートナー
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 ソフトバンクは,ホワイトプランや学割を導入し,とにかく利用者を増やしていくことが戦略上で重要と位置づけている。今回の価格は,顧客獲得が期待できるというソフトバンクの戦略と合致する。販売台数については,100万台以上売れるのではないかと個人的に推測しているが,今の日本の携帯電話のシェアを塗り替えるほどの影響はないだろう。

機能の不足を指摘する声もある。

 iPhoneの意味としては,独自の進化を遂げたことから“ガラパゴス”と称される日本の現状を変える1つのきっかけになるだろう。ウィジェットを作れて,オープンなAPIが用意されているからだ。ウィジェットを提供できるプラットフォームがあるので,これまでとは違った世界が提供できる。通信事業者主導の垂直統合の携帯電話事業を変える可能性を秘めている。ウィジェットが増えればユーザーも増える。

日本のメーカーもiPhoneの類似品や対抗品を作るだろう。

 おそらく作るだろうが,アップルにはブランド力があるので勝負に勝つのは難しい。携帯型音楽プレーヤでも,日本メーカーも類似品を投入したが,iPodや同touchのシェアは奪えていない。iPhoneなどアップル製品には,GUI(graphical user interface)や新しい体験に対するロイヤルティがある。携帯電話はスタイルや生活に密着しているので,同じ機能を持つ端末でも同じだけ売れるというわけではない。

なぜ日本メーカーはiPhoneに対抗できないのか。

 UIに対するこだわりが違う。アップルは魅力あるUIを作るために心理学者の意見を採用するなど,設計の発想や考え方が徹底している。ユーザーが経験することの価値を重視しているのだ。

 日本のメーカーは,ものづくりという観点で製品開発している。長所としては,品質や強度へのこだわりがある。

アップルはどうやって儲けるのだろうか。

 ハードウエアで利益を出すつもりだろう。iTunesのダウンロードから儲けるという戦略ではない。儲けるところはハードウエアだと思う。楽曲のダウンロード増えているが,数を売ることがアップルの事業戦略だ。