写真●「マイクロソフトの企業文化はグーグルと同じく自由闊達」と語るジム・デュボア氏
写真●「マイクロソフトの企業文化はグーグルと同じく自由闊達」と語るジム・デュボア氏
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「Excelレガシー問題に悩んでいるのは当社も同じだ」。Excelの開発元である米マイクロソフトの社内情報システム部門でインフラやセキュリティを統括するジム・デュボア氏はこう語る。Excelレガシーとは現場主導で開発・利用してきた結果、保守不能に陥ってしまったExcelアプリケーションのこと。デュボア氏の指揮下、マイクロソフトは社内システムの簡素化とIT投資の最適化を進める。(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ、写真は中島 正之)

社内ITに関して取り組んでいることは何か。

 社内にあるアプリケーションやIT環境の簡素化とITコストの最適化だ。現在マイクロソフト社内には2000あまりの「シャドーアプリケーション」がある。シャドーアプリケーションとは、社内IT部門の承認を経ずに各部門が開発・利用しているアプリケーションのことだ。

 シャドーアプリケーションを1300くらいに減らすことが目標。社内の財務部門と連携して、利用部門が持つアプリケーション開発予算をすべてIT部門に召し上げた。

 各国法人に数値目標を持たせ、シャドーアプリケーションを削減する。現地の法律に対応するためなど不可欠なものを除いて、原則として現場でのアプリケーション開発は禁じた。

 シャドーアプリケーションの代表例がExcelで開発した部門アプリケーション、そして現場の利用部門が独自に作ってしまうWebアプリケーションである。Excelはエンドユーザー・コンピューティングの代表的なツール。Webアプリケーションについても、当社製品である企業情報ポータル構築ツール「SharePoint Server」を使って、現場の社員が簡単にWebサイトを作れる。

現場が簡単に開発できるがゆえにアプリケーションの統制がとれなくなってしまうという「Excelレガシー問題」に、マイクロソフト自身も悩まされているということか。

 その通りだ。マイクロソフトは技術の会社。ほとんどの社員が自分でアプリケーションを開発できる技術力を持っている。IT部門が用意するアプリケーションよりも自分で作った方が早いと考えてしまう。開発ツールも社内で簡単に手に入る。

問題解決に向けた方策は。

 マイクロソフトのIT部門はシャドーアプリケーション削減の一環として、Excelレガシーの撲滅に取り組んでいる。営業や財務などの業務ごとに、社内標準のExcelテンプレートを作成。Active Directoryで管理する利用者の所属や役職に応じて、販売実績データなどを社内の基幹システムからテンプレートへ自動的に取り込む仕組みを整えた。

 このテンプレートを、経営トップが率先して使うよう仕向けた。スティーブ・バルマーCEOにも最初は独自の要求があった。今は標準テンプレートを使うことの意義を理解しており、標準以外での報告は受け付けないと社内に言明してくれている。

 ITコストの最適化も進める。ITコストの内訳は新規システム開発への投資が52%、残りは既存システムの運用管理に充てている。新規開発に回す投資を、早期に60%以上にすることが目標だ。