COBOLベンダー大手である英Micro FocusのChief Executive OfficerであるStephen Kelly氏が,マイクロフォーカス主催のフォーラムで講演するために来日,ITpro記者のインタビューに応じた。Kelly氏に,COBOLの現状,SOAやWeb 2.0など新テクノロジへの対応,Micro Focusの今後のビジネス戦略について聞いた。



<b>写真1</b>●Micro Focus Chief Executive Officer Stephen Kelly氏
写真1●Micro Focus Chief Executive Officer Stephen Kelly氏
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COBOLの現況について教えてほしい。

 COBOLは現在,世界中で実行されているトランザクション処理の7割で利用されている。銀行のATM,航空会社の予約システムなどのほか,通信分野ではモバイル機器と接続されて稼働している。Googleで検索されている件数の200倍にあたるトランザクションがCOBOLで実行されている勘定だ。独立系調査会社によると,COBOLプログラムのコードは現在も毎日150万ラインずつ増えており,2010年末までには2000億ラインを超える見込みだ。

 Micro Focusの業績はワールド・ワイドで好調で,ロンドンの証券取引所では最も業績の良い株式の一つとして紹介された。中でも日本での売り上げはこの10年間,継続して伸びており,全世界の全売り上げの10%を占めている。

 プログラミング環境としてみた場合,現在のCOBOLの姿は10年前の姿とは全くと言っていいほど変わっている。ビジュアルでグラフィカルな開発ツールになり,開発がやりやすくなった。プログラマにとって非常にエキサイティングな開発言語だと思う。Javaを使っている人も,ぜひ我々のツールを見てほしい。Java以上に革新的なものを見つけてもらえるだろう。

新しいテクノロジにはどのように対応していくのか?

 我々は,革新的なテクノロジ,オープン・スタンダード,オープン・アーキテクチャに対して,非常に強いコミットメントを持っている。SOAの標準を採用するなどして,Web 2.0のほか,今話題になっているクラウド・コンピューティングが本当に立ち上がってきたときに,ユーザーがいつでもそれらを採用できるように,10年,20年にわたって安心な道筋を提供する。

 我々はすでにクラウド・コンピューティングの業界リーダーと話し合いをしている。COBOLアプリケーションをどうしたらクラウド・コンピューティングにぴったり合うような形にできるのか,どうしたらCOBOLアプリケーションからユーザーにサービスを提供できるのか,といったことを議論している。こうしたサービスは基本的に,大手の企業環境向けではなく,コンシューマ向けになるだろう。

 COBOLはすでに,各種サービスを様々なデバイスに対して提供するという意味で,クラウド・コンピューティングの世界に入っているとも言える。COBOLアプリケーションは,最高のビジネス・ロジック,ビジネス・ルール,知的財産を,そのプログラムの中に取り込んでいるからだ。

今後のビジネス戦略は?

 我々は,ユーザーが過去20~30年にわたって投資してきた古いアプリケーションに対して,将来のテクノロジを適用できる道筋を用意する。IBM,マイクロソフト,Hewlett-Packard,日本ではNRI(野村総合研究所)との強力なパートナシップはその一環だ。将来のテクノロジに対して,ユーザーやパートナが移行したいと思ったときに,非常に魅力のある形で移行できるようにしている。

 ITモダナイゼーションの分野に関しては,企業買収も選択肢の一つになる。例えば,SOA関連ベンダーである米NetManageの買収をこの6月に完了した。ユーザーはSOAを採用することで,COBOLアプリケーションの機能をWebサービスとして提供できるようになる。これは,既存のCOBOLアプリケーションを書き直すことなく再利用できるということだ。我々は企業の持つコア・アプリケーションをモダナイズし,今後使われるアーキテクチャに移し替えることによって,20年先にも使っていけるようにする。

 例えば,英国の大手小売業のテスコは,IBMのメインフレーム上の店舗システムをモダナイズした。具体的には,オープンシステム・プラットフォームに移行し,それと同時に,アプリケーションをWebサービスとして提供し,様々なデバイスからブラウザ経由でデータにアクセスできるようにした。こうしたモダナイゼーションによって,既存のソフトが継続して使えるようになっただけでなく,より高い経済性と保守性を確保し,ビジネス環境の変化に迅速に対応できるようになった。