図1 すでに初代iPhoneは,2008年6月までに累計で600万台を売り上げた
図1 すでに初代iPhoneは,2008年6月までに累計で600万台を売り上げた
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 米Apple社は,iPhone 3Gに199米ドルという戦略的な価格を設定した。

 その狙いは,欧米からアジア,中南米,はてはアフリカまで,iPhoneを全世界に広く普及させることにある。Apple社は,iPhone 3Gを2008年7月11日に22カ国で一斉販売するのを皮切りに,2008年中に70カ国へと販売先を広げる。これまで販売先が6カ国だけだった初代 iPhoneとは,価格設定を含めたマーケティング戦略は根幹から変わりそうだ。

 iPhoneを各国で普及させる戦略について,Apple社 Sr. Director of iPhone Product MarketingのBob Borchers氏に話を聞いた。

なぜ価格を199米ドルに抑えることができたのか。

 199米ドルという価格は,我々にとって大変にファンタスティックな数字だ。我々はこの価格を設定できたことに大変興奮している。より多くの国で,より多くの人々にiPhoneを手にとってもらうため,この価格が必要だった。

 この値付けができたのは,我々が携帯電話事業者と協力して(199米ドルで販売しても)お互いに利益を出せる新たなビジネス・モデルを設計したからだ。ただし,各国の携帯電話事業者との個別の契約内容についてはコメントできない(関連記事:AppleとAT&Tによる「通信料収入の分配」が終了,AT&Tの無制限データ通信は月額30ドルに)。

日本を含む各国のiPhoneには,ローカル仕様としてどのような機能が載るのか。

 多言語対応の新たなキーボードや入力支援機能を載せたほか,パートナー企業であるYahoo!社やGoogle社などのローカル向けサービスの仕様に対応させた。このほかに,各国の携帯電話事業者の要望にも応えた。例えば日本では,ソフトバンクモバイルの全てのメッセージ機能への対応を済ませた。もちろん,ローカルの開発者がiPhone向けにアプリケーション・ソフトウエアを開発すれば,iPhoneのローカル向け機能はさらに強化されることになる。

各国の携帯電話事業者は,ユーザーがApp Storeで購入できるソフトウエアに制限を加えることはできるのか。

 それはできない。開発者が望めば,Apple社をホストとして,世界中のiPhoneユーザーにソフトウエアを提供できる。

 地域によっては,例えばオンライン映像受信ソフトを実行するのに十分な携帯電話の帯域を確保できない場合もあるだろう。その場合には,ユーザーは無線LANを使ってソフトウエアを実行すればよい。そもそも優れた開発者は,2G,3G,無線LANの使い分けを十分考慮に入れてソフトウエアを開発するものだ。ただしVoIPについては,携帯電話網での使用は認められない。

初代iPhoneの発売から1年,Apple社が携帯電話事業について学んだことは何か。

 それはまさに,Steve Jobsが基調講演で語ったiPhone 3Gの特徴と同じだ。我々が学んだのは,3Gへの対応が必要であること,エンタープライズ(企業)向けアプリケーションのサポートが重要であること,人々がネイティブ・アプリケーションを求めていること,より多くの国や地域で,より安い価格で使えるようにしてほしいとの要望があることだ。