Webで提供している情報やサービスを組み合わせて、新たなソフトやサービスを作るマッシュアップ。その企業版である「ビジネス・マッシュアップ」を提唱し、日本で開発・実行のための製品を2008年5月30日に出荷開始したのが、変更管理ソフト・ベンダーの米セレナソフトウェアだ。事業戦略を担当するボンバーニ氏は「従来手法だと開発に9カ月かかるアプリケーションを9時間で実現できる」と効果を強調する。(聞き手は二羽 はるな=日経コンピュータ)
ビジネス・マッシュアップとは?
企業で使う様々なアプリケーションを組み合わせて、ある特定の業務を支援するアプリケーションを開発する手法だ。マッシュアップの手法を企業向けに応用しているので、こう呼んでいる。
どのようにアプリケーションを組み合わせるのか。
Webサービスの技術を使う。組み合わせるアプリケーションはパッケージでもいいし、自社開発のものでもよいが、Webサービスの形で呼び出せる必要がある。Webサービスとして使えないアプリケーションは、Webサービスのインタフェースを追加しなければならない。
その上で、当社の製品「Serena Business Mashup」を使って、アプリケーションの組み合わせ方を決める。絵を描く要領で、どのような順序でアプリケーションを呼び出すのか、どんな情報をやり取りするかなどを定義していく。この定義をサーバーの実行環境に置くと、定義した結果に基づいて、異なる部門のユーザーが使う異なるアプリケーションを束ねる形で処理を進められるようになる。
ビジネス・マッシュアップでどんなアプリケーションが実現できるのか。
「採用」や「値引き商談の承認」といった業務プロセスを実行するアプリケーションを作成できる。採用を例に採ると、このプロセスは「求人」「面接」「社員登録」「備品の手配」といった様々な業務から成る。しかも、それぞれの業務を文書作成ソフトのWord、文書管理ソフトのSharePoint、人事パッケージ、独自開発した給与システムや備品発注システムなど、異なるアプリケーションで実現することが多い。
ビジネス・マッシュアップを使えば、すでに利用している個々のアプリケーションを生かして、一連の採用プロセスを支援するアプリケーションを実現できる。「人事情報が入力されたら給与システムに反映させる」といった処理の順序を決めればよい。
9カ月が9時間に
ビジネス・マッシュアップのメリットは。
何といっても開発効率が劇的に上がることだ。ビジネス・マッシュアップが対象とする、部門をまたがる業務プロセスを支援するアプリケーションを一から開発しようとすると、9カ月はかかるだろう。ビジネス・マッシュアップを利用すれば、同じアプリケーションを9時間で実現できる。
いま情報システム部門には、ユーザー部門から数多くのアプリケーションの開発要求が殺到している。しかも、要求内容が複雑化している。10の要求に対して1しか提供できないのが現状だ。ビジネス・マッシュアップを使えば、短期間かつ低コストで、ユーザー部門からの要求に応えられる。ユーザー部門の満足度が向上する一方、IT部門への過度の要求がなくなるので、IT部門も負荷が軽くなるはずだ。
Serena Business Mashupの構成は。
製品としては、ビジネス・マッシュアップの実現に必要な処理の順序や使用するデータを定義するツールの「Serena Mashup Composer」、Mashup Composerで作成した定義に従って処理を進める実行環境の「Serena Mashup Server」から成る。
Mashup Composerでは、呼び出すアプリケーションを順番に矢印でつないでいく要領で業務フローを作成する。プログラミングの知識は必要ないので、ユーザー部門みずからビジネス・マッシュアップを実行できる。業務プロセスに追加・変更があった場合も、すぐ対応できる。更新も容易だ。
加えて、Mashup Composerで作成する業務フローのひな型をダウンロード販売する「Serena Mashup Exchange」も用意している。このひな型をダウンロードし、Mashup ComposerでカスタマイズしてMashup Serverにインストールすれば、さらに開発期間を短縮できる。
製品の価格はMashup Composerは無償で、新しいアプリケーションを開発する段階では無料だが、Mashup Serverで利用開始する時点から1ユーザー当たり月額10〜60ドルの使用料が発生する。Mashup Exchangeでダウンロードできるひな型には有償のものと無償のものがある。
Serenaにとってビジネス・マッシュアップ製品は新規分野への参入になる。これまでの強みをどう生かすのか。
ビジネス・マッシュアップとして実現したアプリケーションの更新権限やバージョンを詳細に管理できる。これは27年間変更管理ソフトを提供してきた当社だからこそ提供できる機能だ。
ERP(統合基幹業務システム)パッケージなどと比べると、ビジネス・マッシュアップのアプリケーションのほうがエンドユーザーにははるかに使いやすい。業務に合わせてアプリケーションを容易にカスタマイズできるからだ。
しかし、ユーザーがアプリケーションをいつ、だれでも改変できてしまうと、業務の標準化の観点では不都合が生じかねない。そこで業務プロセスに変更があった場合に、だれが業務フローを更新できるか、その権限を簡単に設定できるようにした。
バージョン管理も重要な機能だ。ビジネス・マッシュアップでは業務フローを変える際に「やはり元に戻そう」「もう少しここを変えよう」といった具合に作業を進める。それには、それぞれの状態をきちんとバージョン管理しておく必要がある。この機能により、以前のバージョンに戻したければすぐに戻せる。
このほか、アプリケーションの実行の様子を記録したログ管理機能も備える。これは内部統制の整備に役立つだろう。
米国では07年12月から販売している。利用状況は?
システム部門というよりも、法務部や人事部、販売部門、営業部門といったユーザー部門が中心だ。売り上げデータなどの処理にExcelを利用している業務担当者が多いようだ。
SaaSとしても提供
Serena Business MashupはSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)としても提供するのか。
2008年中に、日本でもSaaSとしても提供する予定だ。そう遠くないうちに、多くの人がサービスの利用形態としてSaaSを選ぶとみている。サーバーの管理やソフトのインストール作業が不要なだけでなく、使用料や初期投資が安価で費用対効果が見えやすいからだ。米国ではSaaS型製品の第1弾として、プロジェクト計画管理ソフト「Serena Mariner」をすでに販売している。
SaaSは順調に普及するとみているか。
テクノロジ面では、SaaSの脅威となる存在は特に感じていない。不安要素を挙げるとすれば、SaaSを提供するベンダーが「収益を上げられるか」だろう。先行するSaaSベンダーは思うように収益を上げていないのではないか。株主を納得させる収益を上げられると証明することが、SaaSビジネスを継続するために必須だと考えている。