【前編】ITシステムは“所有から利用へ”

日本ユニシス・グループでネットワーク構築やサポート事業を手がけるユニアデックス。特定ベンダー色を排したマルチ・ベンダー対応をうたい,ネットワーク構築では無線IP電話やユニファイド・コミュニケーションの拡大に力を注ぐ。3月にはMVNO(仮想移動体通信事業者)として携帯データ通信サービスを開始した。高橋社長に同社の目指す方向性などについて話を聞いた。

4月で創立12年目を迎えた。様々な領域で事業を展開しているが,ユニアデックスをどのような会社と考えればよいか。

 もともとは日本ユニシスのハードウエアとソフトウエアのサポート部門,そしてネットワークの構築部門が一緒になってできた会社だ。設立当初からの思いは「ベンダー・ニュートラルなサービス会社になりたい」ということ。オープン化,ネットワーク化の流れの中で,ユーザーにとって一番最適な製品とサービスを提供しようとしてきた。

 ユニアデックスは保守・サポートの会社というイメージが強いかもしれない。実際その通りで,事業に占める比率は大きい。

 特に日本に進出してくる外資系ハードウエアやソフトウエア・ベンダーの製品サポートを担当することが多い。外資系ベンダーは日本法人で販売体制は構築できるが,保守・サポート体制まではなかなか手が回らない。当社には米国への長期出張を通して英語が得意になったエンジニアが多いので,先方の開発部門と連絡を取って,そのあたりを手伝うことになる。最近でも日本に進出してくる海外のソフトウエア・ベンダーからよく声が掛かる。

 ネットワーク構築にも力を入れている。他の会社と比べて強みを発揮できるのは,回線だけではなく,サーバーからネットワークまでを一貫して提供できる点。さらに4年前からは無線に力を入れていて,無線LANや無線IP電話に取り組んできた。売上げは堅調に伸びている。昨年,ネットワーク構築関係の事業は全体の42%を占めた。

3月にインターネット接続サービス「U-netSURF」の中で,イー・モバイルのMVNOとして携帯データ通信サービス「JetSURF」を始めた。

高橋 勉(たかはし・つとむ)氏
写真:宮原 一郎

 MVNOとしてサービスを提供することで,U-netSURFの間口を広げたいという考えからだ。

 ただ,個人向けのインターネット接続は厳しい市場で,So-netやBIGLOBEといった集客力を持つ大手のサービスが強い。我々はそこで戦うつもりはなく,法人向けで生き残りたい。

 SaaS(software as a service)や,モバイルに対応するシン・クライアントなどのソリューションを構築するうえで,MVNOのサービスを活用することになるだろう。


KDDIとの協力関係では,今後どのような発展を考えているか。

 2007年2月に包括提携し,同年4月から協力関係をスタートした。KDDIはこれまでWAN回線を提供してきたが,ユーザー企業構内向けの事業は手薄だった。しかしKDDIは,“これからはWANだけでは売れない,ソリューションとして提供しないとWAN自体の拡大が望めない”,という認識を持っていた。

 しかも,ITシステムは“所有から利用へ”が世の中の潮流になっている。SaaSなどによって,ホスト・コンピュータはデータ・センターへ集約され,例えばメール・システムを各企業が独自に持つ必然性はなくなっている。企業が業務システムを利用さえできれば良い状態になっていく中で,KDDIと一緒にソリューション・ビジネスを立ち上げようと考えた。

 ここで一番重要なのは,ワン・ストップですべてを提供することだ。これまでは何か障害が発生すると,まずサーバー担当者を呼んで,それで解決しないと今度は配線の担当者を呼んで,それでもダメだとWAN回線の担当者を呼ぶといった具合で,ユーザーは煩雑な思いをしてきた。このようなことが起こらないように,我々はKDDIとコール・センターを統合するなど,一体的なソリューションを提供している。

 現在,40~50人のスタッフが飯田橋にあるKDDIのビルに常駐しており,KDDIのユーザーに対して一緒に対応できる体制を整えている。

 ただし,KDDIだけと協力するというわけではない。ほかの通信事業者とも協力関係を築けている。

>>後編 

ユニアデックス 代表取締役社長
高橋 勉(たかはし・つとむ)氏
1948年8月12日群馬県生まれ。71年4月に日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。メインフレームのサポート・エンジニア,カスタマー・サービスを経て,94年から経営企画を担当。ユニアデックス設立のプランニングに参加。97年3月,ユニアデックスの設立と同時に取締役となり主に経営企画を担当。05年10月から代表取締役社長。趣味はゴルフ,スキー,車。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年4月3日)