海野 隆氏
写真●海野 隆 有限責任中間法人 パソコン3R推進センター 理事・事務局長
(撮影:齋藤 哲也)
 

 春は引っ越しのシーズン。この時期、家具や本、電気製品などを処分した人は多いだろう。もしや、捨てたモノの中にパソコンも入っていたのではないだろうか。いや、パソコンを勝手に捨てるのはご法度だ。詳しくは、こちらの記事「パソコンの捨て方」をご覧いただきたいが、使用済みのパソコンはメーカーに連絡し、有償で回収してもらうのがルール。しかし、こうした仕組みを知らない人は多い。そこで今回は、パソコン3R推進センターの海野隆理事・事務局長にパソコンリサイクルについて話を聞いた。

推進センターの設立経緯や目的は。

 パソコン3R推進センターは2004年5月に設立されました。設立の契機は、家庭用パソコンの処理方法が決まったこと。2003年10月から、「資源有効利用促進法」に基づき、家庭から廃棄されるパソコンがメーカーによる自主回収と再資源化の対象になったのです。

 それ以前、家庭用パソコンの回収や再資源化の枠組みは、電子情報技術産業協会(JEITA)が作っていました。この枠組みに沿って活動するのは、 JEITAに加盟しているパソコンメーカーが中心。ところが、法律に基づく制度が始まったことで、輸入販売業者や、JEITAに加盟していないメーカーもパソコンリサイクルの活動に参加するようになったのです。このため、JEITAの中でリサイクル活動を進めるのではなく、共通の目的のために集まったメーカーや業者による新たな組織を作る方が適切だろうと、パソコン3R推進センターを立ち上げました。

 現在の我々の活動の中心は、家庭からの廃棄パソコンの回収をいかに推進していくかにあります。しかし、センターが目指すのは「パソコン3R」です。必ずしも家庭用だけではありません。企業など法人系の廃棄パソコンへの対応も検討しています。「3R」のうちの「リデュース」「リユース」、つまり廃棄物を出さない工夫や、製品の再利用促進にもかかわっています。

扱うのはパソコンだけなのですか

 テレビ、冷蔵庫(冷凍庫も含む)、洗濯機、エアコンの家電4品目については、2001年から「家電リサイクル法」という仕組みが動いています。本来なら、商品特性などの面で問題がなければ、パソコンも家電と同じ枠組みの中でリサイクルできれば分かりやすいでしょう。

 しかし、パソコンのリサイクルについて審議する中で、パソコンと家電は商品特性が少し異なると考えられました。家電製品の多くは、電気屋さんがお客さんに配達し、設置するという行為を伴います。これに対して、パソコンは自分で持ち帰ったり、通信販売で買ったりする商品です。販売店を一切使っていないメーカーもあります。こうした違いから、家電リサイクル法の中でパソコンを扱うのは、必ずしも適切ではないと判断されました。

 家電リサイクル法は、家電4品目の廃棄量がかなり多く、切羽詰まった状態で決められました。一方のパソコンは、物としても小さく、廃棄量もそれほど多くない中で、使われている金属や貴金属を有効活用する観点から、リサイクルが考えられました。それぞれを取り巻く状況も違っていたのです。