ゲームも共有する仕組みが必要

 こうして生み出されたコンテンツには,それを共有する「YouTube」や「MySpace」のような場が必要であると考えています。ただし,動画や写真の共有は簡単ですが,家庭用ゲームの共有は技術的に簡単ではありません(編集注:これは家庭用ゲーム機上で実行できるゲーム・タイトルが,ハードウエア・ベンダーによって認証されたものに限られているため)。

 そこで,Microsoftが自作ゲーム・コンテストを開催することで,コミュニティでのコンテンツ共有を進めてきました。これまで200本を超えるゲームの応募があり,われわれはそのゲームのクォリティの高さに驚いています(関連情報:日本で開催された「XNA Game Studio Japan 2008 Spring Contest」)。2007年には,コンテストで選ばれた優秀作品を4タイトル「Xbox Liveアーケード」で配信しています。

 さらに,2008年のホリデー・シーズン(11~12月)には,自作ゲーム・タイトルを,Xbox 360用のオンライン・サービス「Xbox Liveマーケットプレイス」でも配信できるようにします。これによって「ゲームを作りたい」と思う人々のコミュニティが,より大きくなると確信しています。

ユーザー・コミュニティがゲームを審査

 開発者が自作ゲーム・タイトルを配信する際には,「XNA Creators Club」というクリエイタ・コミュニティによる「審査」を行ってから,全世界のユーザーに公開できるようにしています。

 XNA Game Studioで開発されたゲームの中には,過度に暴力的だったり,他人の知的財産を侵害していたりするものが含まれている可能性があります。Xbox 360プラットフォームとゲーム技術を理解しているクリエイタがまずゲームをレビューすれば,そのゲームに問題があるかどうか判断できるでしょう。

 Microsoftとしては,どのゲームが優れているかとか,どのゲームに問題があるかなどは,判断するつもりはありません。「Games by Community」であり「Managed by Community」,「Played by Community」という考え方です。そのゲームが面白いかどうかは,人にとって異なります。そこで,コミュニティがゲームに対するレーティングを行い,コメントやタグをつけられるようにする考えです。将来的には,開発したゲームの動画などをコミュニティ・サイトで公開できるようにしたいと思っています。

XNA Game Studioですが,ゲーム開発以外にも使われているそうですね。

 様々な組織が「データ・ビジュアライゼーション(データ視覚化)」のために,XNA Game Studioを使っています。例えば,ビジネス分析や,建築物の設計などですね。ハイエンドCADで作成した3Dの構造物を,リアルタイムかつダイナミックに動かすシミュレーションを行うのに,XNA Game Studioを使用しているケースもあります。

 ほかにも,組織内で使用するトレーニング・アプリケーションを,XNA Game Studioで開発している組織もあります。トレーニングをインタラクティブにすることで,よりリアルな訓練を可能にしているわけです。

 コンテストに出展されたゲームを,少し見てみましょうか。例えばこのゲーム(動画1)は,プログラムもグラフィックスも,音楽も,1人のクリエイタが作り出したものです。プログラムができるだけでなく,ギターも弾けたからです。

動画1●米国のクリエイタが開発したアクション・ゲーム(注:暴力的な表現を含みます)

やや暴力的な表現が激しいように見受けました。

 クリエイタは「暴力的な表現が含まれている」と申告していますし,もし申告が無かったとしても,他のクリエイタによるレビューによって,問題点がクリアになるでしょう。一般に公開される際には,それらの情報も付加されるので,レーティング上は問題なくなると認識しています。

1人で作ったと言いますが,ゲーム内の表現に応じてXbox 360のコントローラが振動したりと,なかなかよくできていますね。

 それは,(「XNA Game Studio」で開発したゲームが動作するXbox 360版の.NET Frameworkである)XNA Frameworkに,豊富なAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)が備わっているからです。ネットワーク・サービス「Xbox Live」の機能も使用できますから,ネットワーク・ゲームも容易に開発できます。

 日本のクリエイタも,このようなゲーム(動画2)をコンテストに応募していますね。

動画2●「こびとスタジオ」が開発した「ファニーダンシング」。ボタン操作で,キャラクタを曲に合わせてダンスさせるゲーム。作者はXNA Game Studio Japan 2008 Spring Contestで4名の優秀者の1人に選ばれた

このゲーム動画は,私も「YouTube」で見ました。ゲーム内の歌では「初音ミク」という,昨年日本で発売されたボイス・シンセサイザが使われています。ただ,日本人すべてがこういうゲームが好きだというわけではなく,非常にニッチな市場を狙ったもので…。

 それこそが狙いなのです。大手ゲーム・パブリッシャが開発をためらうようなゲーム・タイトルが登場して,ゲームのバリエーションが増えることを,われわれは願っています。