写真●エフ・セキュアのキモ・アラキア社長兼CEO
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 フィンランドのセキュリティ・ベンダーであるエフ・セキュアのアルキオ社長は,今後のセキュリティ関連の製品・サービスはモバイルとSaaSを軸として展開されていくだろうと指摘する。来日した同社長に,これらへの取り組みと日本での事業展開について聞いた。

日本市場をどう見ているか。そして今後はどのような製品・サービスのニーズが高まると思うか。

 日本市場に参入して10年以上が経過している。主に再販業者やセキュリティ関連のパートナを通じて,事業を堅調に展開してこられた。日本市場は重要であり,かつ成長基調に乗ってきていると言える。そして今後は,特にモバイルとSaaSの分野が大きく成長すると考えている。

携帯セキュリティはエフ・セキュアの注力分野の一つだが(関連記事),日本ではどのような取り組みをしていきたいか。

 日本の携帯電話は,ほとんどが3G(第三世代携帯電話)に対応しており,これらはインターネットに接続することが可能だ。そして今後は特に,LinuxやSymbian OSといったプラットフォームが,特にスマートフォンの領域で注目されるようになるだろう。Windows Mobileもそうだが,モバイルの世界でもセキュリティが必要とされる時代が来ている。

 この分野で我々が取り組んでいきたいことの一つは,セキュリティ・ソフトの携帯端末へのプリインストールだ。デバイス・メーカーとパートナシップを結ぶことで,より大きな潜在性を見込める。ノキアやソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ,それから英国では東芝インフォメーションシステムズとパートナ契約を結んでいる。

 また我々は,携帯電話事業者とのパートナシップを重視している。端末を選ぶのは携帯電話事業者であるためだ。例えばドイツのT-Mobileとパートナ契約を結んでおり,同社は2008年の年初からスマートフォンの大半にセキュリティ・ソフトをプリインストールしている。つまり,携帯電話事業者のスマートフォン展開のなかに,セキュリティは既に組み込まれている。

セキュリティ・ソフト以外で,注目しているところはあるか。

 日本では,子供向けのコンテンツ制御(URLフィルタリングがこれに相当)に対する強いニーズがあると見ている。

 PC向けのコンテンツ制御技術は,既に提供中だ。方法や時期は決まっていないが,我々は固定と携帯の両方を網羅するコンテンツ制御サービスを提供できると思っている。現在,PC向けとモバイル向けのコンテンツ制御技術は別ものだが,移動と固定が収れんする流れに伴って,二つのコンテンツ制御技術もうまく組み合わさっていくと思う。

 そして我々は,ブロードバンド・サービスを提供する通信事業者や携帯電話事業者と提携して,(コンテンツ制御などのサービスを)共同開発していきたいと考えている。先に説明したセキュリティ・ソフトの端末へのインストールは既に市場に展開し始めているが,コンテンツ制御はそれよりは長期的な目標だ。

セキュリティのSaaS(software as a service)は日本でも提供を始めている(関連記事)。SaaSに注目する理由は。

 我々にとっては「security as a service」となる。この分野に注目する背景には,インターネットユーザーの増加がある。多くの人がインターネットを使うことになれば,それはマス・マーケットであることを意味する。マス・マーケットでは,技術を使いやすくすることが(サービス展開の)コンセプトになる。このコンセプトは日本では根付いていると思うので,うまく活性化していきたい。

 SaaSが重要だと考える理由は二つある。セキュリティを効果的に展開できるため,そしてユーザーにとって使いやすいためだ。SaaSは普遍的なビジネスモデルになり,市場の大半を占めるようになると見ている。

 日本におけるSaaSの展開方法は三つあるだろう。一つはISPを通じて,コンシューマ向けに提供していく方法。日本では,9局のケーブルテレビが既にサービスを提供している。それから,企業向けの防御サービスの提供。こちらも日本でサービスを始めており,VAR(value added reseller)やシステム・インテグレータも関心を持っている。そして三つめは携帯電話市場への展開で,現在取り組みを進めているところだ。