スターロジックは5月1日,1業務(1帳票とそれを承認するワークフロー)を9万8000円でオーダーメイドによりシステム化するサービス「ギョイゾー」を開始した(関連記事)。システム・インテグレーション(SI)業界の常識から大きくかけ離れたこのサービスをなぜ始めたのか。どのようにしてこの価格を実現したのか。代表取締役社長 羽生章洋氏に聞いた。(聞き手は高橋信頼=ITpro編集)

なぜ「ギョイゾー」を始めたのですか。

 昨年,「DIY(DoITyourself)」というサービスを始めました。ユーザーが「マジカ!」というカードを使って仕様を書き,1タスク当たり8万円でシステム化するサービスです(関連記事)。

人月からの脱却

スターロジック 代表取締役社長 羽生章洋氏
スターロジック 代表取締役社長 羽生章洋氏
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 「DIY」では人月からの脱却を目指しました。SI業界は長らく人月で仕事をしてきました。人月は時間あたりの労働力を売る業態で,技術者の付加価値は認められない。生産性を上げるよりだらだら仕事をしたほうが儲かる。

 それでも人月で商売せざるを得なかったのは,仕様があいまいで工数が膨らんでしまうリスクをインテグレータが負えなかったからです。そこで,ユーザーに仕様を決めてもらい,1タスクあたり8万円でシステム化を請け負う仕組み「DIY」を作りました。我々が開発したツール「マジカ!」を使います。ITに詳しくなくても業務をカードに書いていけば仕様を作れるカードです。マジカ!の「システムカード」1枚が1タスクで8万円。定額なのでユーザーにとってわかりやすい。ベンダーにとっては生産性を上げれば収益が増える仕組みです。

 「DIY」を何件かやって見えてきたのは,「これだけ決めてくれれば後はこちらで勝手に進めても問題ない」,という要件があるということ。その要件とは,「基本となるデータ構造」と,それをどういう流れで扱うかという「ワークフロー」の2つです。そこ以外はどのシステムもほとんど同じなんです。

 それと,ユーザーは目の前にあるものに対して要望を出すのは得意だが,何もない状態で新しいシステムはどんなのがほしいかを決めるのは不得手だということ。実物がまずあることが大事。

 だったら必要最小限のことだけ決めてもらって,さっさと作っちゃえばいいじゃないかと。それで「ギョイゾー!」を企画しました。

顧客の値ごろ感から価格を決定

 価格については「いくらだったら買おうと思うか」というお客様の値ごろ感から逆算しました。10万円を切れば,稟議を上げやすいなどいろいろな意味で買いやすくなる。今までExcelでやっていたような業務をシステム化してみようか,と考えるだろうと。

 業務のいちばん小さな単位は何か。「1個の伝票をこう回す」という処理ではないか。それなら10万円でできそうだ。というふうに価格と単位を決めました。

 「ギョイゾー!」では,この9万8000円でシステム化する1伝票と承認のワークフローを「1インフォセット」と呼びます。最初は伝票と呼んでいたんですが,既存の言葉と同じでは伝わりにくいのでインフォセットと呼ぶことにしました。

なぜ9万8000円という低価格でシステム化できるのでしょう。ニュースに対する反響の中には,他のところで儲けようとしているのではないかというコメントまでありました。

 他のところで儲けようとは考えていません(笑)。現時点では高い利益率というわけにいきませんが,「ギョイゾー!」だけで採算が取れると考えています。今後は利益率の改善に注力すればいいので,純粋に技術力がそのまま利益に反映するモデルです。むしろ受注が少ないとラインが稼働しないので,採算という意味ではそちらのほうが今は心配です。なので,ぜひまずはご相談いただきたい(笑)。

 なぜ9万8000円でできるかというと,スターロジックが今まで作ってきたツールとフレームワークを使うと,伝票とワークフローさえ決まれば,システムのほとんどが自動生成できるというのがひとつ。Burixと呼んでいますが,ほとんどがオープンソース・ソフトウエアです。