米FalconStor Softwareは,CDP(継続的データ保護)やVTL(仮想テープ装置)に注力しているデータ・バックアップ・ソフト・ベンダーである。各種のサーバー機からiSCSI経由でアクセス可能な仮想ストレージや,この仮想ストレージに対してブロック・レベルで差分スナップショットをとるソフトを中核にしつつ,アプリケーションと同期したバックアップ関連機能に特徴がある。かつてCheyenne SoftwareでARCserveを開発し,現在は米FalconStor Software会長兼CEO(最高経営責任者)のReiJane Huai氏に,データ・バックアップの現状と未来を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro



米FalconStor Softwareで会長兼CEOを務めるReiJane Huai氏(左)と,ファルコンストア・ジャパンのカントリーマネージャーを務める山中義晴氏(右)。
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これまでのデータ・バックアップの課題と,それに対するFalconStor製品のコンセプトを教えてほしい。

 今まで,データ・バックアップの主流は,ディスクの内容をテープにバックアップするというものだった。そして,こうしたデータ・バックアップには,改善する余地が多い。まずはバックアップしたテープを探し出し,サーバー機などのホストにデータをリストアし,データにアクセスできるようにする必要があるからだ。

 運用の現場では,もっとシンプルな技術が望まれている。例えば,バックアップの回数をもっと増やすことで,直近のデータをバックアップしておきたいという需要がある。しかし,そうは言ってもバックアップのためのディスク容量は少なく抑えたいという制約もある。さらにユーザーは,テープからリストアするという手順を踏まずに,ディスク・イメージに対してそのままアクセスしたいと考えている。FalconStorは,こうした需要に応える製品を提供している。

 リストアやリカバリにかかる時間は,「必要なデータにアクセスできない」という意味で「ダウンタイム」と同じである。だからこそFalconStorでは,「システム故障時でも10分以内でアクセスできるようになる」ことをユーザーに対して約束している。そのために,バックアップ/スナップショットのデータを小さくし,確実かつ頻繁に実行できるようにしている。

スナップショットをとる上での工夫はあるか。

 テープ・バックアップと同様に,スナップショット・バックアップにも,アプリケーション用のエージェント・ソフトがある。このエージェントの種類(すなわち対応アプリケーションの種類)を増やしていく。現在,各種のOS向けのほかOracleやSQL Server,Exchange Serverなどの主要アプリケーション向けにエージェントを提供しているが,これをもっと広げていく。VMwareによる仮想サーバー上でアプリケーションを動作させていても,スナップショットが可能だ。

 エージェントとは,データベース・サーバーや業務アプリケーション・サーバーなどのような,特定のアプリケーションのデータを確実にバックアップするためにある技術である。データをバックアップするタイミングやデータのスナップショットを作成するタイミングをアプリケーションに伝え,ディスクにはまだ書かれていないキャッシュ上のデータをディスクに書き込ませたり,アプリケーションを静止状態にさせたりする。これにより,その時点でのデータを確実にバックアップできる。

 写真の撮影にたとえるなら,「はい,チーズ」と呼びかけて注意をひけば,被写体は写真に撮られることを意識し,動きを止めてくれる。これにより,「情報が失われない写真(スナップショット)」をとることができる。データのバックアップ,スナップショットでも全く同じである。データを自在に操っているアプリケーションに対して,「今からスナップショットをとりますよ」と伝え,動きを止めてもらうのだ。こうしたバックアップ・ソフト由来の機能をストレージ装置のスナップショット機能に取り込んで,強く提案していく。

バックアップのためのディスク容量を抑え,リカバリ時間を短縮する方法は何か。

 ハードディスクの“ブロック・レベル”で差分スナップショットをとることである。クラスタ(OSのデータI/O単位であり複数セクターで構成)やファイルのレベルではなく,セクターのレベルで差分を管理する。例えばWindowsのNTFSでは4Kバイトのクラスタが512バイトのセクター8個で成り立っている。ここで1つのセクターのデータが更新されたとしよう。クラスタのレベルで差分を管理するには4Kバイトの差分情報を保存しなければならないが,セクターのレベルで差分を管理すれば差分情報は512バイトで済む。この方法により,差分情報の容量を削減する。さらに,ストレージの世界で流行っているシン・プロビジョニングによって,ディスクの物理量を減らす。