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 ITコンサルティングを手がけるフューチャーアーキテクトの社内ベンチャーとして2006年10月に設立されたザクラ(東京都品川区)。メディア事業を立ち上げ、集客のために自らアフィリエイト広告に出稿。アフィリエイトで行われている不正行為を目の当たりにしたことから、アフィリエイトプログラムの最適化サービス「APOZ」を開発。2008年2月28日より本格販売を開始した。サービス開発の背景、アフィリエイト広告の現状など、代表取締役CEOの鈴木研二氏に話を聞いた。
(聞き手は原 隆=日経ネットマーケティング

APOZはどういうサービスか。

 APOZはASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)を利用している企業向けにアフィリエイトマーケティングを最適化するサービス。複数のASPを一括で管理でき、承認作業の自動化、アフィリエイトプログラム参加者の優良/不良を可視化することができる。アフィリエイトで横行している不正行為を検知、排除でき、費用対効果を高められるのが最大の特長だ。

サービス開発の背景は。

 もともと、親会社のフューチャーアーキテクトはBtoBのシステム開発やITコンサルティング事業を展開してきたが、ザクラはBtoC向けにサービスを展開したいと思い社内ベンチャーとして立ち上げた。自社でメディアとして、無料のソーシャルカレンダーサービス「Zakuraカレンダー」を2007年2月に開始。会員獲得のため、アフィリエイト広告の出稿を始めた。

 アフィリエイトはASPと契約している個人/法人が広告出稿企業のパートナーとなって広告を露出し、そこを経由して企業が設定したコンバージョンに達した場合、あらかじめ指定した報酬を支払う仕組み。広告を出稿する身としては、当然、予算が限られているので、どういう人が入ってくるのかが非常に気になった。

 見てみると、かなりひどい状態だった。顕著な例で言えば、メールアドレスが「suzuki01」「suzuki02」といった連番で作られており、不正な成果報酬を目的とした悪質なパートナーであることが一目で分かる状態。ASPではこうした悪質なパートナーへの報酬支払いを排除できるよう、承認/非承認の権限を広告出稿企業に公開しているが、これを目視でやっていくのが非常に手間だった。そこで、これをシステム的にはじく方法がないかと考え、開発を進めた。

サービス開始は2007年9月と聞いているが、大々的に公開しなかったのはなぜか。

 ASP側から見ると、不正をはじくということは売り上げを減らすツールになる。下手に出して反感を買うのは得策ではないため、水面下で営業していた。

 しかし、周りの話を聞くにつれて、真摯(しんし)にアフィリエイト広告に取り組んでいる代理店自身も、一部のパートナーによる不正行為に困っている現状を知ったため、本格的なサービス開始として発表した次第だ。

どのくらいの割合で不正行為が行われているのか。

 IPアドレスやクッキー(Cookie)などを見てユーザーの重複を調査した結果、無料会員登録系サイトで平均30~50%、問い合わせや資料請求サイトでは平均10~30%の不正登録が行われている結果となっている。不正行為としては大きく2種類あり、一つは個人の小遣い稼ぎを目的としたフリーメールアドレスを多数取得しての多重登録。もう一つはいわゆる人件費が安い海外からの組織的な大量登録だ。

 もともとアフィリエイトは駆け出しの企業にとって、一気にリーチを拡大できる非常にいいマーケティングツールだと思っていた。ただ、現状を見てみると、成果のポイントが徐々に後ろに下がりつつある。つまり、資料請求を成果にしていた企業が、住所・氏名の登録だけでなく、電話確認や郵便による確認があって初めて成果と見なすといった具合だ。アフィリエイト市場自体は伸びているものの、EC(電子商取引)系がほとんど。資料請求など無料のものについては衰退してきている。こうした状況を招いた不正行為を排除し、もともとアフィリエイトの持っている良さを取り戻し、活気を取り戻したい。

対応しているASPはどこか。またASPとの提携は視野に入れているか。

 現在、対応しているASPはアドウェイズの「JANet」、トラフィックゲートの「TGアフィリエイト」、バリューコマースの「バリューコマースアフィリエイト」、ファンコミュニケーションズの「A8.net」、インタースペースの「アクセストレード」、フルスピードの「アフィリエイトB」の全6社だ。基本的にはどのASPにも対応可能だが、現状この6社に対応することで市場の8割くらいに対応できていると考えている。

 さらに効果を高めるため、一歩進めた提携もASPや代理店との間で話を進めている段階だ。仮に提携が実現した場合、認証事業を行うベリサインのように、APOZで不正行為を排除していますといったマークをWebサイトでうたってもらうなど、緩いパートナーシップを組みつつ、提携先企業に付加価値がつくようなイメージを描いている。不正行為に対して目をつぶり、広告出稿企業からの収入のみ重視する事業者との差別化が図れるようにしたい。

現在、広告主でAPOZを契約している企業は何社か。

 どのくらいの不正行為があるのかを診断する無料診断を行っている企業は現在、数十社。既に契約段階まで進んでいる企業が11社ある。

 営業面では思いもよらない苦労もある。というのも、広告出稿費用の●%が不正行為に対して払われていますよというシステムなので、その方のこれまでの業務自体を否定してしまいかねないからだ。

 ただ、APOZはあくまで広告主の費用対効果を高めるために作ったシステム。初期費用や月額費用を低く抑え、中小企業でも利用できる価格帯に抑えている。アフィリエイト広告が本来の費用対効果を取り戻せるよう、今後も不正行為の検出技術や操作インタフェースなど、改善を続けていきたい。