米テラデータのマイク・コーラー社長兼CEO
米テラデータのマイク・コーラー社長兼CEO
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2007年10月に米NCRから分社した、DWH(データ・ウエアハウス)システム「Teradata」を開発・販売する米テラデータ。マイク・コーラー社長兼CEO(最高経営責任者)は「分社という大イベントがあったにもかかわらず、07年は大きく成長できた」と話す。BI(ビジネス・インテリジェンス)専業ベンダーが相次ぎ買収されるなか、「企業はベストな製品を選ぶ。BI専業はむしろ強みだ」と主張する。(聞き手は田中 淳、吉田 洋平=日経コンピュータ)

米NCRから分社して約半年が経過した。以前と比較して変わった点は。

 まず挙げられるのは、強みを持っている分野により注力できるようになったことだ。資金は潤沢にあるので、投資の絶対額をこれまで以上に増やすことができる。当然、技術には積極的に投資する。それ以外にも、パートナーとの提携強化やコンサルティング事業などに投資していく。今まで取り組んだことのない分野にも投資するつもりだ。

 経営判断に関するスピードが上がったことも、今までと比べて変わった点だ。日常的な戦略決定を素早くできるようになったのに加え、国や地域ごとに適切な投資が可能になった。

 ただ、NCRの中の1事業体として培ってきたものは、変わることのない大きな財産だ。今後もそれは守っていく。分社化で変わった部分も変わらない部分も、分社前に想定した通りのものだったと考えている。

2007年の連結売上高は前年比10%増の17億200万ドルだった。

 2007年の業績に対しては満足している。07年は分社に向けて、様々な準備が必要だった。そんな中、前年比10%の増収という大きな成長を遂げることができた。NCRの中にテラデータ事業部ができた2000年から毎年増収を続けているが、10%の成長はその期間で2番目に高い成長率だ。忙しい中でも、顧客のことを第一に考えて業務に取り組んだ成果だと考えている。

 中でも大きく躍進したのは、全体の売上高の約4割を占めるアメリカ以外の地域だ。売上高が前年比18%増だった。国別にみても堅調な数字を示している。日本では、みずほ銀行やJALカードと新たに契約を結ぶことができた。金融以外の業種も好調で、流通や製造、通信などの分野で新規の顧客を獲得できた。売上高の正確な数値は明かせないが、日本でも20%近く売り上げを伸ばしている。

流通をはじめTeradataをすでに導入している企業は多い。既存顧客への売上拡大が増収の主な要因では?

 そうではない。今まで取引がなかった新規の顧客を獲得できている。大手のグローバル企業に対しても、まだ取引を拡大するチャンスはあると思っている。

 新規顧客の多くは、すでにBIツールを使った経験がある。2つめ、あるいは3つめのツールとしてTeradataを導入している。それまで部門別に構築した検索・分析用データベース(データマート)をTeradataで1つに統合したいと考えたためだ。5~6年前は、とにかくBIを入れたいという企業が多かった。現在では、企業全体でどのような情報が発生し、その情報をどう管理・活用するのが最も有効かを検討したうえで、DWHを構築する企業が増えているという印象を受ける。

 とはいえ、企業全体にDWHを一気に導入するのは難しい。導入を成功させるコツは、レポート作成から始めて、分析、予測、リアルタイム分析といった順番でシステムを進化させていくことだ。新規顧客の多くは、まずレポート作成や分析のためにTeradataを導入し、段階的に発展させている。

仏ビジネスオブジェクツ、加コグノス、米ハイペリオンなど競合他社が相次いで買収されたが。

 誤解のないように言っておきたいのは、いま挙がった各社は競争相手ではなくパートナーだということだ。母体が変わっても、パートナーとしての関係は変わらない。これを機にIBMやオラクルとも、より良好な関係を築いていきたいと考えている。

 BI専業であることについては、いろいろな意見がある。実際、すべての分野の製品を一括で提供してほしいと望む顧客も多い。だが、近年のトレンドはシステム全体の構成要素について、それぞれベストなものを選びたいという考え方だ。すでに「BIの分野ではTeradataを選ぶ」という存在だと自負している。今後もその強みを一層高めていきたい。

日本市場についてはどう考えているか。

 最もプライオリティが高い市場の1つと位置付けている。人材の育成や獲得、パートナーとの連携強化などに積極的に投資していく。グローバルと日本での戦略は基本的には変わらない。企業の悩みは、グローバルも日本も共通しているからだ。