NTTのNGNは,IMS(IP multimedia subsystem)を中心に実装した初めてネットワーク。“壮大な実験”とも言える。しかし,ほかの通信事業者の多くは,IMS準拠でNGNを構築するのを躊躇(ちゅうちょ)しているようだ。世界中の通信事業者にハイエンドのルーターやスイッチを提供している米ファウンドリーネットワークスのアメド・アブデルハリム氏に,その辺の事情を聞いた。

(聞き手は高橋 健太郎=日経コミュニケーション


NGNは基本的にIMS(IP multimedia subsystem)準拠なのか。

米ファウンドリーネットワークス ハイエンド & サービス・プロバイダ・システム・ビジネス・ユニット プロダクト・マネージメント&マーケティング・ディレクターのアメド・アブデルハリム氏
米ファウンドリーネットワークス ハイエンド & サービス・プロバイダ・システム・ビジネス・ユニット プロダクト・マネージメント&マーケティング・ディレクターのアメド・アブデルハリム氏
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 そうとは限らない。通信事業者のNGNへのアプローチによるが、NGNをIMSベースで構築するのは容易ではない。IMS準拠でNGNを作ろうとすると,バックボーンからエッジまで,ネットワーク全体の機器などに大きな影響が出てくる。

 通信事業者の間には,IMS自体に対する懸念もある。アーキテクチャが複雑すぎるうえ,対応機器が不足している。それにIMS準拠でインテグレートできるベンダーが限られている。

 IMSで心配されているリスクをどのように避けるのか,現実的なアプローチにはどのようなものがあるのか--などについて日本の通信事業者と情報を交換していきたい。

NTTが構築しているNGNはIMSに準拠している。

 詳細については知らないが,日本においてNTTはNGNのリーダー役を果たそうという動きがあることは把握している。NTTは,20~30年という長いスパンで,ITUのフルスペックに準拠したインフラを構築していくと聞いている。

ファウンドリーも,IMS準拠の製品を提供していく予定はないのか。

 まだ現時点ではなんとも言えない。まずは技術の実証が先だ。MPLS(multiprotocol label switching)でも,実証には10年間かかった。IMSやGMPLS(generalized MPLS)といった新しい技術が今後どうなるかが分かるまでには,時間がかかる。

 日本では,NTT以外の通信事業者はまだ慎重なアプローチを取っているようだ。技術は理解しているが,実サービスへの導入にはリスクがあると考えているからだ。

海外の通信事業者についてはどうか。

 世界全体でも,IMSに慎重なアプローチを取る通信事業者がほとんどだ。NGNの新しいプロジェクトでも,コアにIMSを導入せずに進めている。

 5年後,10年後を見据え,IMSを一部に利用するような形で導入するケースはあるだろう。しかし,IMSをコアにしてNGNの計画を進めているところは見当たらない。まだ不安要素があるIMSを通信サービスの中心に持ってこられない。

 その一方で,IMSを安心して導入できるようになるまで,IPTVやモバイルTV,企業向けVPNといったサービスを導入しないわけにいかない。そうしたサービスは,現行の技術を使ってNGNに導入し,新しい技術が出てきてから置き換えるというアプローチが現実的だ。