IT(情報技術)とマーケティングの調査会社であるフォレスター・リサーチが日本企業に向けて、会員登録などを受け付ける際の名前などの入力フォームに不備が目立つと警告するレポートを発表した。そのレポート「Japanese Consumers Need Better Online Forms」によれば、17社のサイトを調査したところ、ユーザーの視点で見て不親切な点が目立ったという。米国では54%のユーザーが入力作業を途中でやめてしまう調査結果があるといい、日本企業はもっとユーザーの入力しやすさに注意を向けるべきだと提言している。調査を担当した同社のシニア・アナリスト、ジョナサン・ブラウン氏に話を聞いた。

(聞き手は上木貴博=日経情報ストラテジー)


インターネット上で買い物をしたり、コミュニティーに参加したりする際に、名前や住所、電話番号といった個人情報を入力するのは一般的です。日本企業のサイトの申し込みフォームには多くの不備が見られるそうですね。

フォレスター・リサーチのシニア・アナリストのジョナサン・ブラウン氏
フォレスター・リサーチのシニア・アナリストのジョナサン・ブラウン氏

ブラウン:私は日本に10年以上住んでいます。日本語での申し込みフォームの記入が不便だと感じることはありましたが、母国語でないことが理由と思っていました。日本語の能力に問題があるのかと。でも日本人の友人と話していると、彼らにとっても申し込みフォームは使いづらいときがあると聞きました。

 日本語の場合、漢字や平仮名、カタカナ、アルファベットという文字の使い分けに加えて、全角と半角も選択も迫られてただでさえ複雑。ボックスを移るごとに自動的に文字の種類や全角・半角などが自動的に変わるようにデザインされているものは便利です。

他に気づいた点はありますか。

ブラウン:「戻る」「次へ」といった逆の意味を持つ操作指示の文字が、同じサイズと色、フォントのボタンになっているサイトも多い。これでは間違えやすい。誘導したい「次へ」を目立たせる工夫をこらすべきです。さらに日本企業のサイトのほとんどでプライベートポリシーの表示箇所がページの一番下になっています。個人情報の記入欄と離れていては意味がありません。

 エラーメッセージについても改善が必要なサイトが少なくありません。「入力内容に誤りがあります」とメッセージしながらも具体的に間違っている部分を教えてくれない。ユーザーが自分で間違い探しすることになります。親切なサイトでは「カード番号に誤りがあります」といったように教えてくれたり、間違った場所を赤字で目立たせるなどしています。

オンラインで商品やサービスを販売している企業は改めて自社サイトを見直すべきですか。

ブラウン:申し込みフォームがうまくデザインされていないとせっかく購入を決めた顧客を最後の最後で取り逃してしまうことになります。米国金融機関のサイトを対象にした調査では、54%のユーザーが入力作業を途中でやめてしまうという報告もあるほどです。

 理想的な取り組みは、架空の顧客像である「ペルソナ」を構築して、それに基づいてサイト全体をリニューアルすることでしょう。ただし手間もお金もかかるでしょうし、様々な部門を巻き込む必要があるので大変です。まず申し込みフォームを見直すだけなら簡単で、かつ効果も出やすいと思います。