サーバー機とディスク・ストレージをつなぐRAIDコントローラの新製品「Adaptec RAID 5XXXX」シリーズ7機種を2008年3月21日に国内出荷する米Adaptec。SCSI時代の知名度が高い会社であり,規模・成長率が大きいSATA(Serial ATA)市場への参入は,わずか1年前のことである。SATAの新製品を投入する同社Worldwide Marketing部門のDirector,Suresh Panikar氏に,ディスク・ストレージの市場動向を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro



米AdaptecでWorldwide Marketing部門のDirectorを務めるSuresh Panikar氏
[画像のクリックで拡大表示]

Adaptec RAID 5XXXXシリーズ
[画像のクリックで拡大表示]

現在,米AdaptecのRAIDコントローラは,ATA(IDE)系の「SATA(Serial ATA)」とSCSI系の「SAS(Serial Attached SCSI)」を兼ね備えた「Unified Serial」をうたっている。これまでの経緯を振り返ってほしい。

 まず,現在の市場における米Adaptecのポジションから話そう。米国の市場調査会社であるNPD Groupが,米国市場(北米と南米)における,SATAとSASを合わせたシリアル・インタフェース分野の出荷台数と売上高を報告している。それによると,出荷台数も売上高も,Adaptecは米3wareに次ぐ2位である。

 ただし,Adaptecと3位の米LSIの2社が,1位の3wareのシェアを急速に奪っている。3wareは2007年第3四半期から第4四半期にかけて,出荷台数では約3万台から約1万5000台へと半減,売上高では約900万ドルから約600万ドルへと3分の2に落ちている。一方で同時期のAdaptecは,出荷台数が約1万台から約1万2500台へと,売上高では約200万ドルから約300万ドルへと増えている。

 米Adaptecの転機となったのは,新アーキテクチャ「Unified Serial Architecture」を提唱して製品出荷した2007年3月である。これは,1つの製品でシリアル・インタフェースの2つの規格,つまりSATAとSASの両方を使えるようにするコンセプトであり,製品である。大多数のユーザーが求めるSATAコントローラの機能を提供しつつ,使いたければ(SATAの上位互換である)SASも使える,という付加価値を持つ。しかも,SATAだけしか使えない製品と同程度の価格で入手できる。

SATA市場に参入したのは2007年3月が最初なのか。

 その通りだ。正直に言って,SATA市場への参入は,2007年3月のUnified Serialからということになる。これ以前は,シリアル・インタフェースではSASだけを扱っていた。パラレル方式のSCSI専業ベンダーとしての歴史が長かったため,SCSIのシリアル化という意味でSASに向かったのだ。市場ではATA(IDE)からSATAへという流れができていたし,SCSIベンダーとしては,まずはSASを扱ったというわけだ。

 だが,世間には,SASと聞いただけで逃げだすユーザーもいる。SATAでなければ最初から相手にもしてもらえない状況がある。性能や信頼性などの側面において,SASはSATAよりも優れており,エンタープライズ・ストレージ製品にはSASの利点を生かした製品も多いが,やはり世間一般に訴求するためにはSATA機能をSATAの価格で供給できなければならない。2007年3月のUnified Serialの製品出荷以降は,SCSIやSASのイメージで捉えられることのないよう,SATAを前面に押し出して戦っている。

SCSIは消え去るのか。SASはどうなるのか。

 2009年の終わりにSCSIは消滅するだろう。ディスク・ドライブの製造ベンダーは,2008年の終わりには生産を終了するに違いない。SASには今のところ一定数の需要があるが,SASの将来はSATAの進化次第だろう。例えば,米Seagate Technologyが,SASを完全に置き換えられるだけの魅力を持ったSATAディスクを,SATAディスクと同じ価格で出せるようになれば,SASは消えるかも知れない。

SATAを扱う他社と比べた米Adaptecの差異化ポイントは何か。

 Adaptec製品は,パートナ各社のサーバー製品やストレージ製品に組み込まれてユーザー企業に届けられる。Adaptecが重要視しているのは,パートナ各社が求める機能や性能を実現することだ。こうした努力によって,他社よりも半年ほど時代を先取りした製品を実現できる。世の中を見ると,現在では,映像データなどの非構造化データが増えるなど,ストレージの使われ方が大きく変わってきている。ストレージ製品やサーバー製品の需要が変化していることに合わせて,RAIDコントローラなどのAdaptec製品も進化させなければならない。

 今回出荷した新製品の5XXXXシリーズでは,従来製品と比べて性能と拡張性の2点を強化した。性能面では,従来であれば400Mバイト/秒程度でしかなかったデータ転送速度を,1Gバイト/秒を超える転送速度へと改善した。これにより,映像データのストリーミング書き込みやデータ量が大きい3次元モデリングなどの需要に応えられるようになる。一方の拡張性では,1台のコントローラに接続可能なデバイス数を,従来の論理128台から新たに256台までとした。

 外見的に分かりやすい部分の差異として,2つ挙げよう。1つは,サーバー機に固定するブラケット金具に小さな穴を開けていること。エア・フローのためだ。次に,ポート数が多い点を挙げよう。RAIDコントローラのポート数は一般的に,少ないものから順番に4/8/12/16/24ポートとなっている。だがAdaptecでは,これら標準的なポート数に4ポートを追加した製品をラインアップしている。つまり,少ないものから順番に8/12/16/20/28ポートとなっている。