ケーブルテレビ大手のジュピターテレコムは2008年2月1日,東京都中央区勝どきにある大型集合住宅「THE TOKYO TOWERS」にFTTHサービス「J:COM NET 光」を提供開始した。同サービスはNTT東日本の光ファイバを借りて実現した“完全な”FTTHサービス。提供の狙いや,既存のケーブルテレビ(CATV)を利用したインターネット接続サービスとの売り分けを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション



J:COM NET 光はどのようなサービスか。


ジュピターテレコム 販売戦略部営業担当部長の長谷川達雄氏(左)と,通信事業戦略部長の阿賀谷匡章氏(右)
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 J:COM NET 光は集合住宅向けのFTTHサービスになる。集合住宅の外壁まで光ファイバを引き込み,棟内は同軸ケーブルで各戸を接続する。c.LINKと呼ぶ技術を使い,ユーザーは上り下り最大100Mビット/秒でインターネットに接続できる。新しいサービスではなく,2005年7月から提供している。

 ただ,今回のTHE TOKYO TOWERSの案件は少し特殊な例になる。勝どきは当社の管轄エリア外になるため,NTT東日本から光ファイバを借りて当社最寄りのCATV局と接続した。両端にWDM(波長分割多重)装置を置き,3Gビット/秒の帯域を確保。グループ会社のジェイコム東京が電気通信役務利用放送事業者としてサービスを提供している。

 棟内も同軸ケーブルではなく光配線になっている。THE TOKYO TOWERSは分譲が1981世帯,賃貸が813世帯あり,分譲の物件は各戸に4心の光ファイバ(CATV用や予備を含む)を引き込んだ。賃貸の物件は途中までが光配線で,各戸への引き込みはイーサネットである。管理組合と一括契約を結んでおり,インターネット接続料金も分譲の場合は管理費,賃貸の場合は家賃から徴収している。

今後はNTT東西の光ファイバを借りて積極的に展開していくのか。

 案件ベースになる。当社の最寄りのCATV局から離れているとコストがかかる。規模もある程度なければ,採算が取れないので提供できない。THE TOKYO TOWERS以外の具体的な案件はまだ決まっていないが,東京,関西,札幌,九州を中心に積極的に展開していきたい。

 ただ,これは物件が管轄エリア外の場合の話。エリア内は自ら光ファイバを敷設してJ:COM NET 光を積極的に展開しており,関東圏を中心に案件が増えている。J:COM NET 光の契約件数は2008年1月末時点で340棟の2万5000戸(サービス開始件数は160棟の7800戸)になる。

HFC(hybrid fiber coax)を利用した高速インターネット接続サービスも提供している。FTTHサービスとの売り分けは。

 HFCを利用したインターネット接続サービスはこれまで,「ライトネット」(下り最大256kビット/秒),「8Mコース」(同8Mビット/秒),「30Mコース」(同30Mビット/秒)が中心だったが,2007年4月から一部エリアで「ウルトラ160Mコース」(同160Mビット/秒,上りは最大10Mビット/秒)を展開している。

 ウルトラ160MコースはDOCSIS 3.0(data over cable service interface specifications)と呼ぶ技術で高速化を図っており,NTT東西のFTTHサービスに十分対抗できるものと考えている。2008年はウルトラ160Mコースの提供エリアを拡大して本格的に販売していく。ウルトラ160Mコースの提供地域はCATVとインターネット接続サービスの併用率が高いのでユーザーの増加に期待している。

 ただし,ウルトラ160Mコースは基本的に小規模集合住宅や戸建て向けになる。そこで,新築の大規模集合住宅をJ:COM NET 光でカバーする。先ほど説明したようにJ:COM NET 光は当社の管轄エリアかどうかに関係なく積極的に展開していく考えだ。