ディスク・イメージを丸ごとバックアップしておき,災害時に短時間でシステム復旧できるようにする仕組みがディザスタ・リカバリである。米StorageCraft Technologyは,この市場で歴史のあるソフト・ベンダー。販売担当シニア・ディレクタを務めるMike Kunz氏に,企業におけるディザスタ・リカバリの需要について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro



米StorageCraft TechnologyでSenior Director of Salesを務めるMike Kunz氏
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米StorageCraft Technologyの生い立ちと製品技術を教えてほしい。

 StorageCraft Technologyは元々,他のバックアップ・ソフト・ベンダーなどに対して,デバイス・ドライバなどを提供してきた。ディスク・イメージのスナップショットを取るエンジン「Volume Snapshot Manager」が代表的な技術だ。米VMwareの仮想マシン移行ツールであるVMware Converterや,米Symantecのソフト,米EMCが買収した米Dantz Developmentのソフトなどに採用されている。この技術の新版に相当するのが「ShadowProtect」であり,StorageCraft Technology自らがパッケージ・ソフトとして販売を開始した。

 ShadowProtectは,OSを含めたディスク・イメージを丸ごとバックアップするソフトである。データのバックアップ用としても優れているが,災害復旧(ディザスタ・リカバリ)や異機種マシンへのシステム移行などが主な用途となる。クライアントOS向けのDesktop EditionやサーバーOS向けのServer Editionに加えて,システム管理者向けのIT Editionを用意している。

 IT Editionは,StorageCraft Technologyならではのユニークなものだ。一般的なバックアップ・ソフトはサーバー機やクライアント機を対象にライセンスを発行するが,IT Editionではシステム管理者にライセンスを発行する。IT Editionを購入したシステム管理者は,どのサーバーであっても,どのクライアントであっても,そして何台でも,バックアップやリカバリが可能だ。

 ただし,バックアップする単位は,ディスク全体を一度にバックアップする「フルバックアップ」に限られる。一方,Desktop EditionやServer Editionなど1台のハードウエアを対象としたライセンスでは,日々のバックアップ負荷が少ない「増分バックアップ」などもできるようにしている。

ディスク・イメージ・バックアップによるディザスタ・リカバリというと,個人向けのユーティリティというイメージが強い。企業向けの利点を教えてほしい。

 Windows環境のディザスタ・リカバリなら,バックアップしたシステム・イメージを異なるハードウエアに移してもシステムを復旧できる。Windowsには多種多様なデバイス・ドライバが最初から入っているからだ。このため,例えば5年前に導入した会計システムのディスク・イメージを取り,最新のサーバー環境に移行させる,といった使い方もできる。

 どのハードウエア環境に対してもシステムを復元できることの意味は大きい。PtoP(物理マシンから物理マシンへ),PtoV(物理マシンから仮想マシンへ),VtoV(仮想マシンから別の仮想マシンへ),VtoP(仮想マシンから物理マシンへ)といった各種の方式でシステムを移行可能なのだ。新機種への乗り換えや仮想環境との混在環境などにおいて,ハードウエアの制約を受けずにシステム環境一式を移行/再現できる。

 ディスク・イメージを保存したファイルは,ドライブまたはフォルダとしてOSからマウントすることもできる。こうすれば,「消去してしまったり,中身を書き換えてしまった特定のファイルだけを過去の状態に復元する」といった運用が容易になる。マウントしたドライブ/フォルダから該当するファイルを他のドライブ/フォルダにコピーすればいい。

 マウントするイメージ・ファイルは,フルバックアップしたイメージだけではない。増分バックアップのイメージをマウントすると,直前のフルバックアップ・データまでさかのぼり,増分バックアップの作成時点におけるディスク・イメージが再現される。

 ディザスタ・リカバリを導入したユーザー事例の多くに見られることだが,まずはミッションクリティカルなサーバー機に適用している。データベース・サーバーやメール・サーバーなどである。災害時に,すぐに復元させたいからだ。次にファイル・サーバー。特定のファイルだけを元に戻す需要がある。そして最後に,エンドユーザーのクライアントPCで使うケースが続く。