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図1●So-net SNSのトップ画面 [画像のクリックで拡大表示] |
「SNSの多くは『盛り下がり』を経験する」、「上司とフレンドになるのは一番最後」――。見えてきたのは、ネット上で展開されるユーザーやSNSオーナー(管理者)の心の動きと言えるもの。それら心の動きは、ビジネスでSNSを使う際に、どう生かせるか。社内の情報共有にSNSを適用するうえで、どう生かせるか。SNSサービスのリーダーである千輝氏、SNSの各種機能の企画を手掛ける生田氏の2人に、SNSの生態を聞いた。
So-netが提供している「So-net SNS」の特徴は、ユーザー自身がSNSを開設し、オーナーになれること。つまり「mixi」や「GREE」の小型版をユーザーが運営できる。このようなサービス形態にした狙いは、よりユーザー同士の親密感を高め、意図しないユーザーがグループに入り込んでこないようにするためという。詳しくはこちらのインタビュー記事を参照。サービスの開始は2006年6月。2008年2月現在、SNS総数は約2万3000、1日にアクセスするアクティブ・ユーザー総数は2.5万。 |
(聞き手・構成は高下 義弘=日経コンピュータ)
多数のSNSを横断的に比較することで、「SNSの成長プロセスには一定の傾向がある」ことが見えてきたそうですね。
千輝: 2007年に約1500のSNSを抽出したところ、登録したユーザー数や実際に利用しているアクティブ・ユーザー数の増減に応じて、4つのグループに分類できることが見えてきました。
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図2●So-net SNS上で活動しているSNSの4つの分類 [画像のクリックで拡大表示] |
次に大きなグループが、「スロースターター型」で、全体の28%を占めています。その名の通り、ユーザーもアクティブ・ユーザーも開幕ダッシュ型に比べて緩やかに伸びていきます。極端なユーザー数の増減はありませんが、着実に発展していくSNSのグループといえるでしょう。開設した当初から招待制を敷くSNSが多いようです。
3番目のグループが「開幕ダッシュ型・比例タイプ」と呼んでいるものです。SNS開設直後からユーザー数とアクティブ・ユーザー数が両方とも急激に伸び、その後伸びは落ちます。ここまでは開幕ダッシュ型・反比例タイプと同じですが、その後の展開は異なり、大きく落ちるわけではありません。全体の17%がここに該当します。
最後がユーザー数、アクティブ・ユーザー数ともに高成長を維持していく「高成長型」です。これは3%でした。
「盛り下がり」が通過儀礼
大まかに言うとこのような分類ができますが、興味深いのは、多くのSNSが一度は「盛り下がる」時期を経験する、ということです。つまり、ユーザーがある程度増加した段階で、いったん増加率が落ちます。むしろユーザー数が減るケースもあります。開幕ダッシュ型に属する2つが特に、顕著な動きを見せています。下がり方が大きいか小さいかという差はありますが、それでもおしなべて盛り下がる経験をするのです。
SNSのいくつかを観察してみると、当初オープン制を敷いていたSNSの多くは、どこかのタイミングで招待制に切り替えています。これが「盛り下がり」を招いているのではないかと見ています。オープン制から招待制に切り替えると、アクティブ・ユーザー層が減少するフェーズに移るからです。
いつどんな理由でオーナーが招待制に移行させるのかは、正確には把握できていません。個々のSNSの運営方針や目的にもよるので一概には言えませんが、伸びゆくユーザー数の勢いにわざわざ自ら歯止めをかける必要はないはずです。しかし、それでも招待制に切り替えています。
生田: 調査したわけではないので何とも言えませんが、おそらくSNSを運営しているオーナーの「不安感」が持ち上がってくるのではないかと推察しています。このままユーザー数が伸びていくとコミュニティの維持ができない、面倒が見切れないのではないか、という気持ちになるのではないでしょうか。招待制に切り替えてしばらく様子を見てみよう、という判断をしているように見えます。