日本通信は,携帯電話事業者が運用するiモードなどのサーバーを経由せず,ダイレクトに企業のサーバーへ接続できるサービス「ケータイPC化サービス」を2007年12月に開始した。携帯電話だけで,企業のアドレスあてに届くメールを直接送受信できたり,イントラネット上の業務アプリケーションを利用できるようになる。サービスを提供する背景やユーザーの導入メリットなどについて,日本通信 常務取締役 CFOの福田尚久氏に聞いた。



「ケータイPC化サービス」を開発した背景は?

 第3世代携帯電話(3G)が浸透した現在は,携帯電話のメールやブラウザ機能を利用してデータ通信するユーザーがかなり多くなっていると思います。それに伴って,携帯電話向けのコンテンツ関連も豊富になり,企業内では携帯電話でスケジュール管理などを行うソリューションも増えてきました。

写真1●日本通信 常務取締役 CFOの福田尚久氏
写真1●日本通信 常務取締役 CFOの福田尚久氏
 こうした状況の中で,欧米を中心にビジネスパーソンの利用が進んでいるカナダのResearch In Motion(RIM)製の情報端末「BlackBerry(ブラックベリー)」が日本市場にも投入されています。端末の価格は高いですが,会社に届くメールをそのまま読めるメリットがあり,実際に日本で利用しているユーザーもいらっしゃるようです。

 海外の場合は,そもそも携帯電話にはショートメッセージ機能ぐらいしか付いていませんでした。ですから,そのような環境下で会社に届くメールを見ようと思えば,特殊な端末を使ってメールを送受信するという方法が,一つの選択肢となり得るのでしょう。しかし,日本の場合はすでに携帯電話にメール機能が備わっているのですから,それを使った方が手っ取り早いわけです。携帯電話でメールや社内の情報を見られるならばそれで十分というニーズの方が,圧倒的に高いと思われます。そこで,そのニーズに応えるべく開発したのが,私たちの新しいソリューション「ケータイPC化サービス」なのです。

どんな使い方ができるサービスですか。

 ケータイPC化サービスは,携帯電話事業者と日本通信のネットワークを相互接続し,さらに日本通信とユーザー企業のサーバーとを専用線で接続して実現します。こうすることで,BlackBerryが提供するメール機能と同様のサービスが,一般の携帯電話端末でも利用可能になります。つまり,携帯電話から直接,企業のメール・サーバーへアクセスできるようにするサービスです(図1)。

図1●ケータイPC化サービスの仕組み
図1●ケータイPC化サービスの仕組み
iモード・サーバーの代わりに日本通信のゲートウエイ・サーバーに接続し,企業内システムとの連携を取る。

 それだけではありません。携帯電話のブラウザからイントラネット上のグループウエアに直接アクセスしたり,自社のサーバー上のさまざまなコンテンツを携帯電話から閲覧できるようになります。携帯電話向けにiアプリを作って,業務システムとのクライアント/サーバー・システムを構築すれば,例えば売り上げデータをその場で確認できます。パソコンと同様に携帯電話を業務で使いこなせる環境が実現するのです。

 サービス開始当初は,NTTドコモとネットワークを相互接続し,携帯電話を利用したMVNOとして法人向けにサービスを行います。2007年7月初めに,NTTドコモとの相互接続に関して総務大臣による裁定を申請し,NTTドコモに相互接続の申し入れを行いました。その後は,NTTドコモの全面的な協力により,当初計画していた日程よりも前倒しでサービスを提供できる運びとなりました。