セキュリティには真剣に取り組んでいる

 大企業がGoogle Appsのようなサービスについて、セキュリティとコンプライアンスの面で不安を持っているのは理解している。当社は発足当初からセキュリティに注力してきた。専門の人材を集めるだけでなく、インフラの徹底的な多重化などで万全を目指している。

 グーグルは世界で数十所のデータセンターを運用している。私個人はまだ見たことはないが24時間365日運用しており、物理的なものや監視体制を含めかなりの対策を実施している。たとえば過去に、グーグルのあるデータセンターで火災が起きたことがある。だがこの火災が原因で、グーグルのサービスが一瞬でも止まることはなかった。

 当社は数千万通のメールや数千億円以上のオンライン・トランザクションを処理している。システムの多重性、可用性、セキュリティもこれに耐えるものだ。企業情報システムを内製した場合と比較して、信頼性を考えて欲しい。

 今、家庭に置いておくよりも銀行に現金を預けたほうが不安だと考える人はいない。同じように情報も、専門家の所に預ける方が安全性も上がるし、最新の技術が使えるのではないか。

 コンシューマ、SaaS、ホスティングの考え方を取り入れることで、メンテナンスの煩わしさを抑え、低コストでセキュリティを保ったまま、最新の技術を常に利用できるようになるのだ。実際に、最近では少し状況も変わってきた。

 世界の大企業のトップ500社のうち、50%がSaaSやホスティングを検討してもよいと考えている、という調査結果が出ている。そのうちの40%はGoogleを検討してくれているという。大企業もアウトソースに積極的になってきているようだ。日本でも、KDDIやライブドアのほか日本大学、東京女子大学、嘉悦大学なども当社のサービスを利用している。

スターウォーズの酒場を思い出した

 最後にグーグルについての印象を語りたい。グーグルはイノベーションの先駆けとなってきた企業だ。入社してはじめて、国カリフォルニア州マウンテンビューの本社を訪れた際には、スターウォーズの宇宙人が集まった酒場みたい、というのが第一印象だった。若い自由闊達な印象にあふれた企業である。

 もともとは検索の会社としてスタートした。正式創業は1998年で、当時は対応言語も限られていた。現在は117カ国語に対応している。

 一説によると世界中の情報をデジタル化すると500万テラバイトに達するという。そのうちグーグルが検索対象としているオンラインデータは170テラバイトくらいだといわれている。

 世界中の情報を整理して、だれでもがアクセスできる世界の実現を真剣に目指すといのがグーグルの使命だ。世界各国で配信しているニュース、書籍、YouTubeでやっている映像、企業内情報、対象とする情報空間をどんどん広がっている。我々の試は始まったばかりだ。

 グーグルというのは、常に宇宙から地球を見ている視点を持っている企業だと思う。世界には多くの地域、異なる言語、異なるネット環境で生きているさまざまな人がいるが、すべての人をエンパワーしようと考えている。

【注】本記事は、11月29日の「SaaS World」での辻野氏の講演「『Google Apps 色々なエディション』Search, Ads, Apps--」をまとめたものである。