オープンソースのESB(エンタープライズ・サービス・バス)「Mule」を開発する米ミュール・ソースが、企業向けに製品の機能強化を進めている。今年10月にはオージス総研が正式に販売代理店契約を結び、国内での販売を開始した。Muleは2003年から開発プロジェクトが始まった、比較的歴史のあるオープンソースESBだ。100万件のダウンロードの実績があるという。デイブ・ローゼンバーグCEO(最高経営責任者)に戦略を聞いた。(聞き手は矢口 竜太郎)
企業向けの展開を強化しています。
今年6月から、企業向け機能を強化したエンタープライズ版「Mule Enterprise Edition」の販売を始めました。これは、無償で提供するMuleの上位版という位置づけで、管理機能「Mule HQ」などの機能を付加しており、当社からのサポートも含みます。
それまでは、Muleをサポートすることでビジネスを展開していましたが、6月以降は無償版をコミュニティに移管しました。「MuleForge」というWebサイトで開発を続けてもらっています。
無償版のサポートはどうなるのですか。
移管を機に、当社のサポートはエンタープライズ版のみが対象になりました。コミュニティ版は当社からのサポートはありませんが、コミュニティに質問することでサポートを受けることができます。米レッドハットのエンタープライズ向けLinuxの「Red Hat Enterprise Linux」とコミュニティ版Linuxの「Fedora Project」の関係だと思ってください。
導入実績は上がっていますか。
エンタープライズ版でない企業も含めて、年内には導入企業が100社に達する見込みです。これは想像以上に速いペースだと思っています。フォーチュン50社の中では7社が導入しています。
導入企業はどのように使っているのでしょうか。企業内個人が半ば趣味で利用している程度でしょうか。それとも企業のシステム基盤として使われているのでしょうか。
当社のサポートを利用している企業はほとんどシステム基盤として使っています。税務サービス大手の米H&Rブロックは、1万3000ものオフィスとデータをやり取りする基盤としてMuleを採用しました。
今後の戦略を聞かせてください。
エンタープライズ版の機能をさらに強化していきたいと思っています。このほか販売チャネルの充実にも力を注ぎます。現在は米国、英国、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、南米など全世界で25社の販売パートナーがあります。日本ではこの10月にオージス総研がパートナーになりました。日本での市場拡大も期待しています。
注)ESB:サービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づいてシステムを実現する際に、サービス同士の連携に必要な機能を提供するミドルウエア