ユーザー・インタフェース(UI)にFlashやAjax,Javaアプレットなどを使い,Webアプリケーションをより使いやすくするRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)。その開発/実行環境として,いま注目を浴びているのが米Adobe SystemsのFlexや「AIR(Adobe Integrated Runtime)」だ。AdobeでFlex Evangelistを務めるTed Patrick氏に,FlexやAIRをはじめとするRIA技術の現状と今後の方向性について聞いた。(聞き手は安藤 正芳=日経ソフトウエア)

FlexとAIRの位置づけは。

米Adobe SystemsのTed Patrick氏
米Adobe SystemsのTed Patrick氏

Patrick氏:Flexはソフトウエアの開発環境,AIRは実行環境という違いがある。Flexの現行版であるFlex Builder 2は,EclipseベースのGUIを使った開発ツールだ。これに対し,AIRは開発環境ではなく,デスクトップ・アプリケーションを実行する際に必要なランタイム(ソフトウエアのモジュール群)の役割を果たす。どちらも,Webアプリケーションとデスクトップ・アプリケーションとの架け橋となるものだ。

Adobeの開発ツールはデザイナ向けというイメージがある。

Patrick氏:確かに我々のソフトウエアはデザイナ向けと認識されがちだ。我々はこれから,より本腰を入れて開発者を支援していきたいと考えている。


 いま,Webアプリケーションとデスクトップ・アプリケーションの差はなくなりつつある。いま望まれているのは,Web開発者が手軽にデスクトップ・アプリケーションまで開発できるプラットフォームだ。現状では,リッチ・アプリケーションを開発するエンジニアに対して,十分な開発環境が与えられていないと思っている。


 Flexは,こうしたアプリケーションを開発したいと考える開発者の創造性を具現化できることを念頭に開発が進められている。プログラミング経験があれば,誰でもリッチなデスクトップ・アプリケーションを開発できる。

例えば,プログラマはFlexとAIRを使ってどのようなことができるのか。

Patrick氏:  「何ができるか」と問われれば,「何でもできる」という答えが妥当だろう。開発者の創造性によって何でも開発できる。AIRで動作する「Buzzword」というアプリケーションはその好例だ。Wordのようなドキュメント・エディタをオンライン/オフラインを考慮せずに利用できるものだ。Wordとの互換性もある。


 AIR向けに開発されたアプリケーションは,クロス・プラットフォームで稼働できることも大きな特徴だ。同じアプリケーションをWindowsやLinux,Mac上で利用できる。一度,AIR向けのアプリケーションを開発すれば,そのアプリケーションはWindowsでもLinuxやMacでも稼働する。

オブジェクト指向への対応など,言語仕様を今後拡張する予定はあるか。

Patrick氏:  次期版のFlex Builder 3(2008年1月出荷予定)では,AIRの機能を拡張するエクステンションが統合される予定で,追加インストール無しでAIRのアプリケーションを開発できるようになる。すでにFlex Builder 2では,クラス・ベースの開発も可能だ。また,2008年中に出荷予定のFlash on C/C++を使えば,CやC++のコードをActionScript(Flashが備えるスクリプト言語)に変換し,取り込めるようになる。

FlexやAIRにはまだバグが残っているという声もあるが。

Patrick氏:  我々は当然,品質を第一に考えている。しかし,すべてのプラットフォームに対応するのは容易でない。FlexやAIRは,開発者のコミュニティに支えられている。ぜひ,日本の開発者も,バグなどを発見したらhttp://bugs.adobe.com/ まで報告してほしい。