米MicrosoftのSanjay Parthasarathy, Developer & Platform Evangelism Group副社長が,2007年9月のMicrosoft Innovation Award 2007 コマーシャル部門においてプレゼンテーションツール「Afterglow」で最優秀賞を獲得したLunascapeの近藤秀和 代表取締役兼CEOを訪問。ソフトウエアにおける革新や,ベンチャ企業支援策などについて話し合った。(聞き手は中條将典=ITpro編集)

Microsoftがベンチャ企業支援についてどのような考えを持っているのかを教えてほしい。

米MicrosoftのSanjay Parthasarathy, Developer & Platform Evangelism Group副社長(左)とLunascapeの近藤秀和 代表取締役兼CEO(右)
米MicrosoftのSanjay Parthasarathy, Developer & Platform Evangelism Group副社長(左)とLunascapeの近藤秀和 代表取締役兼CEO(右)

Parthasarathy 氏:私はこれからの10年でもっとも重要なのは,ユーザー・エクスペリエンス(UX)における革新だと考えている。新しいハードウエアやソフトウエアの機能を生かして,すべてのUXがガラッと新しくなる。UXの革新はソニーやキヤノンといった大きな企業だけでなく,新たに起業したベンチャ企業からも出てくるだろう。ベンチャ企業は技術革新のペースを落とさずに保っていくためには不可欠な存在だ。

 私たちはベンチャ企業を支援するために,技術革新の必要性に対する認知度を高めたり,これからどこが革新技術の領域になるのかといった情報を共有したりしている。学生向けの技術コンテスト「Imagine Cup」のようなイベントを開催したり,ベンチャ企業の起業を支援する「Microsoft Innovation Center」のような施設を設けているのはその例だ。ベンチャ企業に対しては,ベンチャ・キャピタル・コミュニティに紹介したり,顧客企業やパートナ企業に引き合わせるといったこともしている。

 ベンチャ企業の多くは,コンピュータ・サイエンスを学んだ学生が起業している。近藤氏は,学生時代にはImagine Cupに参加し,そして今回は「Afterglow」でInnovation Awardを受賞したので,私たちの支援がうまくいっている完璧な例ではないか。Afterglowはコンピューティングの幅を広げる技術であり,大きな可能性を秘めたUXだ。私はUXにおける革新的な技術は日本から出てくると考えている。

Microsoftにどのようなことを期待するのか。

近藤 氏:私たちが望んでいるのは,自分たちのテクノロジをビジネスとして成功させることだけでなく,世界中に広めてユーザー・インタフェース(UI)を変えること。そして,ユーザーに満足してもらうことだ。私はAfterglowを最初に見たとき,革新的なUXだと感じた。MicrosoftにはAfterglowを世界に広めるための,ノウハウや人脈のサポートをお願いしたい。私たちは日本の市場についてはわかっているが,グローバルな市場や,そこでユーザーが何を考えているのかはわからない。そのあたりを支援してほしい。

 最近,技術のイノベーションのスピードはますます加速している。インターネットの登場と普及で,情報の伝達速度も非常に速くなった。小さな企業だけではもちろんやっていけないし,大きな企業であっても単体ではそのスピードについていけないだろう。小さな企業から大きな企業までが一緒になって,世界を変えていく。そういう時代になっている。

日本発のソフトで世界に通用するものは少ないと言われているが,その点についてはどう思うか。

Parthasarathy 氏:  確かに,世界中の地域によってソフトのどの分野を先駆けてやるかという違いはある。例えば,イスラエルは通信とセキュリティ,インドはサービス指向,中国・米国はポータルやWebサイト,欧州はSNSが得意,といった具合だ。私は日本のソフトはUXで世界一になれると考えている。

 私は日本に何度も来ているが,日本で見られるUXは,日常的でシンプルなものであっても,非常に洗練されていると感心している。例えば,お店で買うギフトについて思い起こしてほしい。どんな小さなギフトでも素晴らしいラッピングが施されている。完璧なUXの一例だと思う。別の例を挙げてみよう。ソニー,キヤノン,ニコンなどの製品は,非常にすぐれた工業デザインを持っている。これらはもちろん費やされた努力やサイエンスのたまものだと思うが,それをソフトに適用すれば大きなチャンスがあるはずだ。

 日本がUXで先んじるには,関連機関のコミットメントや熱意が必要だ。政府,業界を引っ張る先進の企業,大学など教育機関などが協力し,連携する必要があるだろう。UXにおけるチャンスを洗い出して具体的な取り組みをしていけば,UXの領域で日本が成功できないはずはない。