企業向けに携帯電話を使った事業のコンサルティングを行うドコモ・ドットコム。2000年7月に設立して以来、約150社のコンサルティングを引き受けている。モバイルマーケティングの現状について、ドコモ・ドットコム、コンサルティング部チーフクリエイティブオフィサーの村上勇一郎氏に話を聞いた。

聞き手:原 隆=日経ネットマーケティング


QRコードや空メールの活用など、モバイルマーケティングが徐々に一般的になってきているように見えるが。

ドコモ・ドットコム コンサルティング部チーフクリエイティブオフィサー 村上勇一郎氏
ドコモ・ドットコム コンサルティング部チーフクリエイティブオフィサー 村上勇一郎氏

 まだまだこれからというのが実情でしょう。外部の調査データですが、企業のうちパソコン向けWebサイトを作っているのは76.1%ですが、ケータイサイトを作っている企業はそのうちの10分の1にすぎないようです。

 これまではケータイビジネスといえば有料サイト一辺倒でした。ただ、徐々に物販や広告事業も立ち上がってきています。ようやくケータイインターネットのビジネスモデルがパソコンインターネットに近づきつつあるというのが正確な表現です。

 そういった意味で、まさに黎明(れいめい)期。企業がケータイサイトを立ち上げてくれれば、広告ビジネスモデルが成り立ちます。ここ数年で立ち上がってくるのではないでしょうか。でなければ、逆にビジネスチャンスを逃すでしょう。

ケータイを活用したマーケティングが進まない理由は何か。

 決裁権を持っている人に「ケータイは若い人のものだ」という偏見があるのでしょう。ほかにも小さい画面で何ができるんだ、とか。効果がどうこうという訳ではなく、決裁権者が自分に分かる範疇(はんちゅう)しかやらないというのがケータイマーケティングが進まない最も大きな理由ではないでしょうか。企業の決裁権者がケータイユーザーではないので、ケータイビジネスに対して理解がなく、決済が下りないわけです。

モバイルマーケティング普及のターニングポイントは。

 まず、パソコンインターネットに変革をもたらした「高速通信」「定額制」。これがケータイマーケティングに変革をもたらします。そして、現在、「3G」「パケット定額制」と出そろいました。これによって有料サイト一辺倒だったケータイに「物販」「広告」というビジネスモデルが加わっていくでしょう。

 事実、物販に関しては昨年あたりから急速に伸びてきています。通販市場でも売り上げのうち、ケータイ経由が20%を占める企業も増えてきています。

 広告は徐々にですね。広告モデルをケータイで展開しようとしても、大手企業のほとんどはキャンペーンサイトは作っていても、自社のケータイサイトはまだ作っていません。まだクライアントがいない状態で、あまり急速に進めても仕方がないと思います。

ケータイを活用したマーケティングが持つ独自の可能性は。

 携帯電話はユーザーが肌身離さず持っています。つまり、どの層でもリーチできるわけです。若年層をターゲットにしやすいと思われていますが、例えば通販市場で一番のボリュームゾーンは25~35歳の女性です。

 またメディア横断的に使えるのはケータイだけです。こうした意味で、メディアのハブになるのがケータイだと思います。10歳代後半から20歳代前半のユーザーの実に60%がテレビを見ながら携帯電話を触っているという調査結果が出ているのですから。各メディアとバッティングしないのです。広告主や広告代理店はすぐにメディア別に分けますが、ほかのメディアと連携できる、それがケータイの最大の特徴です。

 ケータイの検索クエリーを見ていると面白いですよ。テレビに出てくるキーワードも多いですが、雑誌に出てくるキーワードもある。これはなんだ?と思うものがたくさんあります。後から、雑誌をぱらぱらめくっいて知るわけですが。