コールセンター事業からネット事業まで幅広く手がけるトランスコスモス。様々な関連企業に積極的に出資を行い、その企業数は約50社におよぶ。同社のネットマーケティング戦略について、同社上席常務執行役員サービス企画本部長の河野洋一氏に話を聞いた。

聞き手:原 隆=日経ネットマーケティング


様々な企業への出資が絶えない。トランスコスモスはネットマーケティング分野に対してどういうアプローチをしているのか。

トランスコスモス 上席常務執行役員サービス企画本部長 河野洋一氏
トランスコスモス 上席常務執行役員サービス企画本部長 河野洋一氏
 

 周りからみたら、いろいろ手を出していて一貫性がないのではという感じに見えるかもしれませんが、実は意味があります。私が統括している部門にはコールセンター(CC)事業、デジタルマーケティング(DM)事業という二つがあります。なぜこの二つの事業が同居しているのか。

 2000年ころから急速にブロードバンドが普及したこともあり、企業と消費者の関係がコールセンターからメールやWebに移ってきました。本来、我々が力を注いできたのは企業のテクニカルサポートの受注。ただ、これだけでいいのだろうかという疑問を持っていました。基本的に持っていた概念の拡張が必要な時期を迎えたわけです。

 サポート業務は基本的にはインバウンド。これをアウトバンドに活用しましょう、つまりマーケティングに活用しましょうという展開を行ってきています。インバウンドにはテクニカルサポートだけでなく、受注生産、クレームなど様々な顧客の声が入ってきます。電話だけではありません。メールもあれば、手紙もある、店頭で接客していて得た声もあるわけです。こうした集めた情報をきちんとデータベース化し、マーケティングに生かしていく。Webサイトやケータイサイトもよく考えればアウトバウンド型ですから。

企業がネットやケータイをマーケティングに活用するケースが増えている。

 企業と消費者の関係を結ぶ手段を一つひとつ見ると、その理由が見えてきます。例えば、マス広告。これはコストが非常に高い。しかし、One to Oneマーケティングではないですよね。一方で我々が得意とするコールセンターはどうでしょう。コストはマス広告と比べると低いですが、それでもコストはそれなりにかかります。最低でも1件当たり300円はもらいますから。その分、顧客と直接お話をするわけですから、これは完全にOne to Oneマーケティング。

 では、パソコン向けのWebサイトやケータイサイトはどうか。これらはコストが低く、かつやり方によってはOne to Oneマーケティングが可能なんです。例えば、100万円でサイトを構築して100万人のユーザーが訪れたら、1人当たりにかかるコストは1円ですから。

 ただ、企業のネットやケータイのマーケティング活用には問題点もあります。企業と消費者の間で「会話」が1回しか行われず、ループしていないんです。1 回プロモーションをしたら終わり。企業が消費者に対して刺激を与え、刺激を受けた消費者が企業に対して何らかの行動を移す。それによってまた企業が刺激を受けて、消費者に対してアプローチを行う。我々はこのループを「会話連鎖」と呼んでいますが、本来はこういう会話の循環が行われるべきです。

 マス広告も同様ですが、テレビ広告だってどれくらいの反応があったか分からないものです。うまくいったケースでも、企業側がマス広告を打つ、消費者が企業の店舗に行く、売り上げが上がる。よかったね、で終わるケースが圧倒的です。会話連鎖が行われていない。

 会話連鎖は企業の規模に関係するものではありません。大企業だけでなく中小企業だって実現できる。コールセンターがないと実現できないわけでもないんです。