米アドビ システムズのケビン・リンチ氏(撮影:皆木優子)
米アドビ システムズのケビン・リンチ氏(撮影:皆木優子)
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「Buzzword」は現在、ブラウザーを利用するベータ版を公開中
「Buzzword」は現在、ブラウザーを利用するベータ版を公開中
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「Adobe MAX 2007」の基調講演では、リンチ氏自らAIRを利用したBuzzwordのデモを行った
「Adobe MAX 2007」の基調講演では、リンチ氏自らAIRを利用したBuzzwordのデモを行った
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 2007年10月1日(米国時間)、オンラインで動作するワープロソフト「Buzzword」を開発するバーチャルユビキティの買収を発表した米アドビ システムズ。同日、オンラインのストレージサービス「SHARE」(コード名)もベータ版としてサービスを開始した(両サービスとも現時点で英語のベータ版を提供)。2007年11月1日からアドビ システムズが都内で開催した「Adobe MAX 2007」で講演するため来日した米アドビ システムズのケビン リンチ氏に、その狙いと今後のソフトウエア戦略について聞いた。

■なぜバーチャルユビキティの買収を考えたのか。

 Acrobatシリーズを提供する中で、ユーザーが「編集」、さらには「共同作業をしながらの編集」に興味があるということが分かった。そういう面で、オンライン上で編集作業のできるBuzzwordを開発しているバーチャルユビキティに、我々の投資先として可能性を感じた。さらにBuzzwordのソフトは、弊社が提供する開発ツールであるFlexを用いて開発しているため、Flash Player上で動作できること、デスクトップアプリケーションとしてAIR(Adobe Integrated Runtime:アドビ システムズが開発するアプリケーションの実行環境)上でも動作可能であることも大きい。

■SHAREの概要とほかのサービスとの違いは。

 SHAREはファイルの共有を目的としたサービスだ。単にファイルをアップロードするだけでなく、共有したい相手に編集権も与えるか、閲覧だけにするかなども設定できる。Buzzwordを利用すれば、その場で共同編集もできる。PDFや画像ファイル、マイクロソフトのオフィスファイル形式に対応し、ユーザーは無料で1GBまでのストレージ容量を使える。

 ほかのストレージサービスとの違いは、Flashの技術を生かしている点だ。例えば、PowerPointで作成したプレゼンテーション資料をアップロードしたとしよう。通常のファイル共有サービスであれば、それをダウンロードして利用する。一方、SHAREはそのファイルをFlash形式に変換し、Web上で見られるようにできる。プレゼンテーションの資料が一枚一枚めくられていくような動画ができあがり、それを自分のブログに張り付けたり、動画として公開できる。

■今後は表計算やプレゼンテーションなどのオフィスアプリケーションを出すのか。

 ソフトウエアは現在オンライン上にどんどん移行しており、オンラインのビジネスアプリケーションは既にたくさんある。(バーチャルユビキティのような)新興企業でもそういったアプリケーションを手がけられる時代。今はBuzzwordのみでの展開を考えているが、今後そういったアプリケーションに関して出さないとはいい切れない。

■オンラインアプリケーションが企業に導入されることはあり得るか。

 あると考えている。企業で導入しているソフトは現在オンラインアプリケーション化が進んでおり、いわゆる「SaaS(Software as a Service)」が増えている。例えば、SHARE一つ取っても、2つの事業者間でファイルを共有するなど十分にビジネスシーンで利用できる。Buzzwordは今後、AIRを利用してデスクトップアプリケーションとして提供する予定で、そうなれば使い勝手はもっとよくなるだろう。

■オンラインからスタートしたソフトをパッケージ化して提供することはあるか。

 それはない。弊社でも現在既存の製品に関してはパッケージで提供しているが、オンラインアプリケーションとしてスタートしたソフトを逆に箱に入れて提供するということはない。それはソフトの古い使い方だ。

 もしかすると、ソフトウエアベンダーによってはオンラインでのソフト提供をせずに、パッケージビジネスを動かしたくないと考えているところもあるかもしれない。例えば、マイクロソフトはオンラインでオフィス(Microsoft Office Live Workspace)を提供すると発表したが、パッケージのオフィスを所有していないとユーザーは編集ができない。

 一方、我々はSaaSでのソフト提供はソフトウエアベンダーにとって不可欠だと考えている。今、欧米の学校で何が起きているかというと、学生は宿題をやるのにオンラインアプリケーションを利用している。インストールして利用する昔からのソフトの利用をやめて、オンラインアプリケーションを使っているのだ。