米BMCソフトウェアはシステム運用管理の老舗ベンダーである。90年代はメインフレーム用ツール、90年代半ば以降はUNIX用ツールを中心に展開。そして今、力を入れているのが「BSM(ビジネス・サービス・マネジメント)」というコンセプトとそれを具体化するソフトウエアの提供だ。ボブ・ビーチャム社長兼CEO(最高経営責任者)に事業戦略を聞いた。 今、米国ユーザーが抱えている悩みは何ですか。 大きく3つあります。1つめはコストです。これは永遠の課題ですが、ITコストが下がれば、最終的に企業の利益は高められるわけで、多くの企業が、コストを引き下げるために何らかの手段を講じなくてはならないと考えています。 2つめは、ビジネスとITのギャップです。ビジネスとITが一体となって事業を推進できていない。これはCIO(最高情報責任者)が最も焦点を当てているテーマです。 そして3つは、ITがあまりにも複雑になってしまったことです。ある投資銀行のCIOと話したら、「システムの統合ができないため、今回の買収はスケジュールどおり進みませんと、会長に報告せざるを得なかった」と言っていました。 自社で開発したITマネジメント用のソフトが非常に複雑化してしまい、手放したいと考えている企業が沢山あります。自社開発ソフトが、他社との差別化につながることはほとんどありません。複雑さのみが問題になっている状況です。 ITの複雑さを解決し、ビジネスの視点でITを運用するコンセプトとして、BMCソフトウェアはBSM(ビジネス・サービス・マネジメント)を掲げています。これはどのような考え方ですか。 BSMを一言で表すと、「ITをまとめて自動化する」ということになります。システムのマネジメント、ITサービスのマネジメント、システムの構成管理、構成変更など、これらすべてを統合して自動化します。さまざまな問題に対して包括的に対処することができます。 具体的な例で説明します。企業のシステムに何らかの構成上の問題があったとします。その場合、システムのマネジメントをしている製品が問題を検知し、ヘルプデスクにトラブルが発生しそうだということを知らせます。次に構成管理データベース(CMDB)をチェックして、このトラブルが基幹業務に関連しているか、クリティカルなものかどうかを判断します。ビジネスにとってクリティカルなものだということになれば、優先順位が高いものと見なし、自動的にシステムの構成を変更するなどして、障害の兆候に対処します。 もう1つ例を挙げると、あるサービスが定期的に発生するような場合、BSMはそのサービスを自動化して提供します。例えばオフィスを新設する際には、社員に対してeメールのアドレスを提供したり、パスワードを設定したり、Webサーバーを用意したりと、いろいろとやらなければいけないことがあります。BSMによって、それらを自動的に手配することができます。ユーザーに割り振るリソースの量やコスト、必要なハードやソフトの種類、その数量などを数時間で自動的に導き出すため、何度も会議して発注するものを決めるといった手間が不要になります。 企業の中で最も自動化が進んでいないのは、実はIT部門です。財務部門、製造生産部門、営業部門、人事部門など、IT部門以外の部署ではかなり自動化が進んでいます。このような現状を、BSMによって改善できます。 仮想化やSOAで運用は複雑化するこの2年ほど、大手のアウトソーサやシステム・インテグレータもBMCのBSMを採用し始めています。例えば、米アクセンチュアはグローバルでBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を提供していますが、BSMを使って標準化に取り組んでいます。米EDSや米CSC、またインドのインフォシス・テクノロジーズやウィプロも同じような動きを見せています。 私は2001年にCEOになったのですが、当時はITバブルが崩壊し、当社も新しい道を模索していました。向こう10年間通用するビジネス戦略は何かを、大手顧客にインタビューしながら探りました。そして得た結論がシステム・マネジメントとITサービス・マネジメントの融合でした。それでITサービス・マネジメントに強いレメディー社を2002年に買収し、BSMを推進してきたのです。 仮想化によるサーバー統合などもITコストを引き下げる手段として注目されています。
仮想化やSOA(サービス指向アーキテクチャ)の導入によりITコストは下がりますが、逆に運用はどんどん複雑化していきます。サーバーやストレージが1カ所にあった時代でさえシステムの運用は難しいものでした。仮想化したサーバーが企業のどこにでも存在するという状況になると、手に負えないものになってしまいます。SOAの導入によってアプリケーションの仮想化が進行した場合も同じことです。そのような状況では、BSMに基づきITを自動化する必要性がさらに高まります。 多くの企業では現在、IT予算の60〜75%ぐらいを既存システムの運用に費やしています。新しいアプリケーションの開発とか、イノベーションに結びつく部分に投資を回せていません。 ITの複雑化に関する悩みは日本企業も同様です。日本市場についてはどう見ていますか。 日本は世界第2位のIT市場であるため、BMCのビジネスにとって重要な国です。日本市場はいくつかの特徴があります。プラットフォームやOSなど独自のものが存在していることや、顧客が非常に質の高いものを求める傾向が強い点などです。日本の大手メーカーは運用管理ツールも独自製品を持っており、BMC製品と時として競合する場合がありますが、同時に重要なパートナーでもあります。 日本は製品だけでなくサポートも高品質が求められる質に関して言うと、製品の質だけでなく、顧客サポートの質にも非常にハイレベルのものが求められます。日本で受け入れられるためには、日本向けにローカライズした質の高い製品が必要になります。当社は今年7月、基幹製品である「Service Impact Manager」を日本向けにローカライズし、サポートも含めて発売しました。今後も日本には焦点を当てて、質の高い製品やサービスを提供できるように投資していきます。 確かに現時点では、日本は世界第2位のIT市場ですが、本社から見た地位は相対的に低下しているのではないですか。 インドや中国などが目覚しい成長を遂げているのは事実です。カスタマー・ベースがグローバルに分散され、2〜3カ国で売り上げのほとんどを占めるといった状況は変わってくるでしょう。だからといって、日本市場の重要性が低くなるということはありません。日本で大きな成長を達成することはBMCの最重要課題の1つです。
(聞き手は,桔梗原 富夫=日経コンピュータ編集長,取材日:2007年10月2日) |