約550のテーマで専門家ガイドによる多彩な記事が読める情報提供サイト「All About」。今年に入って様々な媒体と提携を進めるAll Aboutの現状、そして新たに狙う広告市場などについて、オールアバウト代表取締役社長の江幡哲也氏に話を聞いた。

聞き手:高橋 暁子=フリーライター,原 隆=日経ネットマーケティング

オールアバウトは、多くのユーザーに見られることを目的としたバナー広告などの「リーチ広告」、検索エンジンで検索した人に関連した商品の広告を表示する「サーチ広告」ではなく、「キャッチ広告」に今後注力するとしている。これはどういう広告か。

オールアバウト 代表取締役社長 江幡哲也氏
オールアバウト 代表取締役社長 江幡哲也氏

 まだあまり浸透していない言葉かもしれませんが、「キャッチ広告」とはユーザーの注意関心を刺激して行動を促すタイプの広告のことです。テレビなどのマス広告では「キャッチ広告」が中心ですがネットではあまり考慮されていません。

 事実、これまでのネット業界は「リーチ広告」、「サーチ広告」で伸びてきました。しかし、それらは既にいるユーザーに対して、効率化を突き詰めていくタイプの広告です。いずれ、頭打ちになるときがくるでしょう。そろそろネットでも編集記事風の「キャッチ広告」に本腰を入れていく段階にきたのではないかと思っています。興味を喚起させるのが本来のメディアの役割です。「喚起させる」という点にこだわって取り組んでいきたいですね。

「キャッチ広告」はつまりは編集タイアップ広告に近い。バナー広告や検索連動型広告に比べて手間がかかりそうだが。

 All Aboutは、サービスを開始した当初からタイアップ広告を展開しています。これまでにタイアップ広告は約3000本手がけてきました。タイアップ広告といっても、すべてを毎回スクラッチから作成するわけではなく、蓄積したノウハウをベースに共通して利用できる部分はユニット化するなど、効率化を実現できています。

All Aboutがサービスを開始した2001年当初と今では状況が大きく変わってきている。専門ガイドと影響力の持ったブロガーの違いはどこか。

 All Aboutは一貫してこちらでテーマを出し、ガイドを募集して記事を書いてもらうという形を取っています。ブロガーはテーマに沿って記事を書くわけではなく、様々なテーマの記事が混じってしまっています。つまり、そのテーマに関するすべてが網羅されるわけではないのです。All Aboutは、ブログよりもむしろ雑誌に近いものだと思いますね。メディアとして編集したものを提供しており、シーズン展開や取材もありますし、ニーズがあるテーマを出すようにもしていますから。

 このように、All Aboutのガイド記事とブログ記事はまったくタイプの異なるものですから、競合するものではなく、むしろ相乗効果があると考えています。魅力的な記事を書くブロガーにはぜひガイドとして参加してもらいたいですね。

メディアとしてのブランドをどう構築しているか。

 約1600万の読者のうち半分が検索エンジンから、残りの半分がトップページから来ます。トップページといっても、All About全体のトップページから来る人もいれば、テーマごとのトップページから来る人もいます。All About自体のファンもいれば、テーマのファンだったり、ガイドのファンだったり、と様々です。

 All Aboutは、当初からSEO(検索エンジン最適化)対策を意識して作っているので、記事は上位に表示される確率が高い。そのため、検索から来る読者も多いのです。そこで、どこから来ても必ずAll Aboutの記事であると認識してもらうため、どの記事でも必ずAll Aboutのどのガイドが書いた記事なのかが分かるようにしています。どこから来ても、最終的にはAll Aboutが役立つ情報を提供しているということを知っていただき、ブランドがユーザー間に浸透すればいいと考えています。