ヤフーは2007年の秋、検索連動型広告を手がけるオーバーチュアと、コンテンツ連動型広告のブレイナーを子会社化した。また、行動ターゲティング広告の開発や、広告を共同で掲載するアドネットワークの提携先開拓に力を注いでいる。広告本部本部長の武藤芳彦氏に、ヤフーが注目するネットマーケティング手法や、競合への対抗策、現在のネット広告市場に対する認識などを聞いた。

聞き手:杉本 昭彦=日経ネットマーケティング


米ヤフーの子会社だったオーバーチュアを9月に子会社化したが、何が変わったのか。

ヤフー 広告本部本部長 武藤芳彦氏
ヤフー 広告本部本部長 武藤芳彦氏
 

 米国ではディスプレー型のバナー広告とPPC(ペイ・パー・クリック)型の検索連動型広告を連動させています。日本でも米国のように横展開ができるようにした方がいいということで、バナー広告のヤフーと検索連動型広告のオーバーチュアが一緒になりました。ヤフーもオーバーチュアもグーグルと競合しているので、手を組まない理由はありません。

 今後、バナー広告と検索連動型広告で、「1+1=2.5」になるようにやっていくつもりです。グーグルが日本を重視して様々なことを始めています。対抗するという言葉が正しいか分かりませんが、我々も良いサービスを次々と提供していかないといけません。今回の統合でそれがやりやすくなりました。

米国ではどのような取り組みをしているのか。

 バナー広告と検索連動型広告を融合させた展開を進めています。EC(電子商取引)サイトでは、バナー広告を活用して知名度を向上させて、検索連動型広告のクリック率を向上させています。掲載期間や表示場所を連動させることでクリック率が上がっているわけです。日本では夏から検証を始めましたが、米国の成果に近い結果が出つつあります。

クリック率はどれぐらい上がるのか。

 米国では2倍ともいわれていますが、日本では検証中です。バナー広告を出すことで検索数が増えるという効果もあるようです。トップページの広告の「ブランドパネル」に出すと、検索数が上がるという調査はしていました。ただ、検索連動型広告とブランドパネルを併用する人は限られた広告主。女性だけに出したいという広告主もいます。ブランドパネル以外、例えば「ヤフー!グルメ」にある主婦向けのレシピコーナーのバナー広告と検索連動型広告が相乗効果を示すような検証を続けていきたいと思っています。バナー広告と検索連動型広告を一つのサイトで出せることで、グーグルとの差異化にもつながります。

ヤフーとして注目しているネットマーケティングの手法・技術は。

 ネット広告のブランディング効果の追求、効果の向上などの面で様々なものがあります。

 バナー広告は10月から主力商品を、コンテンツの上にある横長のバナーから、コンテンツの右横にある真四角の「プライムディスプレイ」に変更しました。テレビ、新聞、雑誌やポスターのビジュアルを連動させるには、横長より四角の方が統一感を持てます。2008年1月にトップページを変える予定ですが、ブランドパネルはサイズを少し大きくして、ブランディングの訴求をよりしやすくするつもりです。クリエーティブの質を訴求できるような場所を用意していきます。

 ブランディングとともに、広告の価値として効果、成果、効率も問われます。そこで、行動ターゲティング広告も増やしていこうと思っています。広告の露出場所が、ヤフーとそれ以外のサイトにも広がっています。ヤフーで行動履歴を残した人の関心をとらえて、関心に沿う広告を外部サイトで表示する。これによって訴求したい商品にマッチした人たちを拾い上げやすくなります。

 地域ターゲティングにも力を入れています。もともとインターネットは、地域に関係なく北海道も沖縄も同じ情報を見られるのがメリットでした。半面、広告展開ではそれがロスになるケースもあります。しかし、「Yahoo! ID」やIPアドレスなどの情報で地域ターゲティングができるようになりました。地域限定のプロモーションや、地域限定で企業活動をしている広告主もターゲットに入りました。性別や年齢別などによるデモグラフィックターゲティングも組み合わせれば、より効果的。それをネットワークサイトでも共同で展開していきたいと思っています。