利用者参加型の技術がWebや企業に氾濫する情報を整理するのには効果的だ。国内最大のソーシャル・ニュースサイト「newsing」を運営するだけでなくし、企業向けに同サービスをカスタマイズした「イントラnewsing」するマイネット・ジャパンの上原仁社長はこう語る。(聞き手は中村 建助)

newsingについて聞きたい。

マイネット・ジャパン 代表取締役社長 上原仁氏、取締役 綱島容一氏
写真●マイネット・ジャパンの上原氏と綱島氏

上原 newsingは国内最大のソーシャル・ニュースサイトだ。Webで公開されているニュースを○×で評価したりコメントを付けたりすることができる。

 当初想定していた主な利用対象は一般のビジネスパーソンだ。最初のコアコミュニティは私が主催しているビジネスパーソン向けの交流会。そこから利用者が広がってきた。

 現在、月間で50万ユニークユーザーが利用しているが、実際に事務系の会社員の利用が一番多い。2.0系のサイトとしては珍しいのではないか。

 今後は、ニュースという切り口で一人ひとりの人間が他の人間とつながっていくソーシャルな場としての機能を高めていきたい。そのためにマイページの強化などを進めていく。

ソーシャル・ニュースは参加の垣根が低い

上原 ○×での評価やコメントによって、newsingでは価値付けして情報を整理できる。Web上に存在しているブログにしろニュースにしろあまりに多い。すべてを読むことはおろか自分に興味のあるものを探して読むことすら困難だ。Web2.0の特徴であるユーザー参加を生かすことで氾濫する情報を整理できる。

 利用者の参加の垣根を下げることができるのもnewsinのようなソーシャル・ニュースの特徴だ。世の中のすべての人間が、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で積極的に情報を発信しようというわけではない。ソーシャル・ニュースにはコメントの書き込みや○×の評価を通じて参加できるので、、これまではブログやSNSを読むだけだった人も利用しやすくなる。

企業向けのイントラnewsingはどうして生まれたのか。

上原 イントラnewsingは、newsingを使っているビジネスパーソンから「同じものを社内でも使いたい」という要望があったことが開発のきっかけだ。その後、みずほ情報総研と共同研究開発して、企業向けに必要な機能を追加するなどした。いわば。企業内の情報共有やナレッジマネジメントの専門家とWeb2.0に取り組んでいる当社の合作といえる。

具体的に企業はどういった点を評価しているのか

綱島 感度の高い社員が収集した競合製品や社内製品、マーケットの情報を共有できるようになることだ。社員にとっては、○×で評価して価値付けされた情報を1カ所から収集できるので、収集がぐっと楽になる。これまではメールで情報を送る企業が多かったが、埋もれてしまって一人ひとりの社員にまで届きにくかった。

上原 できる“あいつ”の考え方を知ることができるというのもメリットだ。実は同じ社内でも優秀な社員の考え方を聞ける機会は少ない。ニュースへの評価コメントを読むだけでも、これまで分からなかった同僚の考え方の一端を知ることができる。

 硬い表現になるが暗黙知の可視化といってもよい。これにより、日々のコミュニケーションを形に残すことができる。

現場の暗黙知をすくい上げる

社内ポータルやグループウエアなど既存の情報共有ツールとはどう違うのか。

綱島:これらのツールは確かに多くの企業に存在しているが、形式知を共有するのに適したものだ。硬これまでは暗黙知だった、現場の知恵を取り上げるものとしてブログやSNSが登場してきた。イントラnewsingもこういった種類に属するツールになる。

 90年代後半からのナレッジマネジメントでは、バラ色のストーリーが語られたが、導入しても実際にはほとんど誰も利用しなかった。形骸化してしまったわけだ。イントラnewsingは情報を発信せず見るだけの人にも役立つものになっている。当社のソフトではアクティブに利用する人間も全体の70%を超えるという結果が出ている。単体としてだけでなく、社内ポータルの一部として利用することも可能だ。

 Enterprise2.0の概念を発表した米ハーバード・ビジネススクールのアンドリュー・マカフィー準教授は、これを6つの事象で説明している。SLATESつまり、Search(コンテンツの検索)、Links(コンテンツへの関連付け)、Authoring(コンテンツの作成)、Tagts(コンテンツの分類)、Extensions(コンテンツの推奨)、Signals(コンテンツの更新の通知)の6つだ。イントラnewsingはLinksやTags、Extensions、Signalsなどを実現するもの。SearchやAuthoringについては他社製品とも連携していく。

 現在は、通常のライセンス方式に加え、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)形式もも企業に提供している。10社が導入し、30社がモニター利用している状況だ。本格的に売り始めたのは7月だが、思った以上に大手企業の関心が高い。

ユーザーのWeb参加を価値に変えていく

マイネット・ジャパンはどういった事業展開を考えているのか。

上原 Web2.0はユーザー参加という言葉に集約される。当社の設立する時の理念として「どこでもドアを実現する」というものを掲げている。これだけでは分かりにくいが、会いたい時に会いたい人に会える社会を作ろうということだ。この理念の実現にWeb2.0は有効だと考える。

 当社は現在、4種類のサービスを手掛けているが、このことはすべてに共通する。当社の目的はユーザーのWeb参加を価値に変えていくことにあるといってもよい。収益の方法にはこだわらない。