写真●米Serena Software 社長兼CEO Jeremy Burton氏
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画面●Serena Mashup Composer
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 ソフトウエアの変更管理ツール「PVCS Professional Suite」などを開発・販売する米Serena Softwareは今年9月,SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型のソフトウエアやWebサービスを組み合わせて業務アプリケーションを構築する「ビジネス・マッシュアップ」を,新たな事業領域とすることを発表した。同時に,アプリケーション構築を支援するツール「Serena Mashup Composer」をリリースしている。米Serena Software社長兼CEO(最高経営責任者)のJeremy Burton氏(写真)に,ビジネス・マッシュアップ事業への参入の狙いや,日本での事業戦略を聞いた

従来の事業領域である「アプリケーション・ライフサイクル・マネジメント(ALM)」と大きく異なるビジネス領域に参入する狙いは

 当社はこれまで,アプリケーション開発を効率よく進められるように,変更管理や要件管理の支援ツールを提供してきた。これは,「アプリケーション・ライフサイクル・マネジメント(ALM)」と呼ばれる領域のツールである。だが,ALMのツールだけでは,ユーザー企業が抱えるアプリケーション開発の問題を解決できなくなってきた。

 その問題とは,アプリケーション開発に求められる“スピード”である。ユーザー企業の事業部門によるアプリケーション開発の要求は,IT部門が自前で持つその能力をはるかに上回っている。当社の顧客の声を聞くと,事業部門からの要求は,IT部門の能力の5~10倍に達している。現在のIT部門にとっての大きな問題は,アプリケーションの開発スピードを速めることである。これはALMツールだけでは解決できない問題だ。

 そのための手段が,既存のアプリケーションを組み合わせて必要な業務プロセスを構築すること。具体的には,SaaS型の業務アプリケーションや,Webサービスとして公開されている業務プロセスを組み合わせることで,これを実現する。いわゆる“Web2.0型”のアプリケーション開発である。Web2.0型のアプリケーションは,従量課金型のライセンス体系を利用することで,コスト削減にもつながる。

 当社は今後,Web2.0型のアプリケーション構築を支援するツールセットを提供していく。これは,「ビジネス・マッシュアップ」と呼ばれる領域になる。

ビジネス・マッシュアップの領域で,どのような製品やサービスを提供していくのか

 マウスを使った簡単な操作で,ビジネス・マッシュアップを実現できるツール「Serena Mashup Composer」(画面)を9月にリリースした。このツールを使えば,公開されたSaaS型のアプリケーションやWebサービスを利用し,簡単にアプリケーションを構築できる。

 例えば,Salesforce.comと連携してセールスリードを管理する場合を考えてみよう。Salesforce.com上で登録した商談情報に対し,「ディスカウントのための承認フローを追加する」「セールスのクローズ後に販売管理システムに売り上げデータを登録する」といった機能を容易に追加でき,それを新たな業務アプリケーションとすることができる。

 Mashup Composerを用いて作成したアプリケーションを稼働させるには,マッシュアップ・サーバーを購入して自社で運用するか,当社がネット上で提供するサーバー環境を利用するか,のどちらかを選択できる。実運用する際はコストは発生するが,Mashup Composerは無償のツールである。多くのユーザーに,ビジネス・マッシュアップの良さを体験してもらいたい。

ビジネス・マッシュアップによって,既存のアプリケーション開発者は必要なくなるのか

 ビジネス・マッシュアップによって構築するのは,CRMやERPといったアプリケーションの機能そのものではなく,その組み合わせだ。マッシュアップでは構築できない複雑な業務プロセスは,これまで通りの方法で開発する必要がある。

Webサービスを流通させるためのマーケットプレイス「Serena Mashup Exchange」を自ら提供するのはなぜか

 ビジネス・マッシュアップを広めるには,あらゆる業務プロセスのニーズに応える様々なWebサービスや,標準的に利用できるマッシュアップ・アプリケーションが数多く提供されることが不可欠だからだ。多くのユーザーからの利用が見込める流通の場を提供することで,一つひとつは小さいWebサービスを提供することにも,大きなビジネスの価値が生まれる。

日本市場でのビジネス・マッシュアップの事業戦略は

 日本は,セールスフォース・ドットコムの成功に代表されるように,SaaSのアプリケーションを活用することにたいしてオープンな市場だ。米国を上回る成長市場であると期待している。まずは来年の3月にMashup Composerの日本語版を提供する。加えて,Mashup Exchangeについても,来年中にはローカライズして提供していく計画だ。

 当社のビジネスは,ALMの領域が中核であることは変わりない。今後はそこにビジネス・マッシュアップのビジネスが加わる。3年後には,ビジネス・マッシュアップの領域が,売上高の10%程度を占めるようになることを見込んでいる。