米Cisco Systems Martin E.Lans氏
米Cisco Systems Martin E.Lans氏
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 米Cisco Systemsは今年7月,次世代のデータセンター構想「Data Center 3.0」を発表した。ネットワーク機器やサーバー,ストレージが仮想化されたデータセンター環境を構築するコンセプトで,リソース管理ソフトやWAN環境の最適化ソフトなど,実現のための製品を今後提供していく。米Cisco Systemsでデータセンター関連事業を統括するMartin E.Lans氏(Director,Business Development Data Center Business Unit)に,Data Center 3.0の狙いや同社のデータセンター関連ビジネスについて聞いた。

Data Center 3.0とは何か

 データセンターは,メインフレーム時代の“Data Center 1.0”から,分散ネットワーク環境に構築された“Data Center 2.0”に変化したが,現在は新たな変革を迎えている。ユーザー企業が目指しているのは,サービス指向型のデータセンターだ。仮想化の技術を使って,ストレージとサーバーが持つパワーを最大化していくことを求めている。仮想化によって機器を統合し,利用効率が高まれば,電力の削減やコスト削減につながる。それを実現するのが“Data Center 3.0”だ。

 ユーザー企業が利用するデータセンターは既に,Data Center 3.0のコンセプトに基づくものに変わってきている。そこでは,IT部門の役割にも変化が起こる。企業のIT部門は,Data Center 1.0からData Center 2.0に移行するときに,ビジネスに関するコントロールを失ってしまっていた。事業部門が内部に影のIT組織を抱えて,データや業務をサポートしていたからだ。だが,Data Center 3.0の実現を通じて,再びIT部門が企業のコントロールを取り戻すだろう。ユーザー企業では,情報システムの運用コスト削減が大命題であり,仮想化技術を使ってシステムを一元化することが,その解決策につながるからだ。

なぜCiscoが次世代データセンターの構築に取り組むのか

 Data Center 3.0では,データセンターは従来のサーバー中心の環境から,ネットワーク中心へと変わっていく。当社は,Data Center 3.0を実現するテクノロジーをすべて提供している。ネットワークだけでなく,ストレージやサーバーなど,データセンターが必要とするあらゆる接続性を提供している。

データセンターの仮想化には,サーバー・ベンダーやストレージ・ベンダーも力を入れており,競合する

 競合はもちろんあるが,Data Center 3.0のビジョンを実現するには,サーバーやストレージ・ベンダー,ソフト・ベンダーとの協業が不可欠だ。VMwareとの協業はその典型だ。VMwareの仮想環境をSAN(ストレージ・エリア・ネットワーク)からブートするために,当社の製品を活用していく。

 ときにはパートナーと当社の考え方が一致しないこともある。例えばパートナーの1社である日立製作所は,仮想化はストレージ・コントローラ上で実行すると考えているが,当社はネットワーク上で仮想化すべきと考えている。だが,そうした考え方の違いも含めてデータセンターのあり方を共同で提案し,ユーザー企業に選択してもらう。

Data Center 3.0を実現するにはどのような製品/技術が必要なのか

 Data Center 3.0で最も重要なのは仮想化のテクノロジーであり,そのための中核製品として「VFrame Data Center」を提供する。データセンターではこれまで,ストレージやサーバー,ネットワークを個別に仮想化して管理してきたが,データセンターが大規模になってデバイスの数が増えると,その管理負担は増大する。VFrameは,このバラバラの管理を統合する製品だ。アプリケーションの要件を定義することで,ストレージやサーバーといった様々なデバイスへのプロビジョニング(コンピュータ資源の割り当て)を自動化する。

 仮想化以外では,WAN経由のアプリケーションの実行を高速化する「Wide Area Application Services(WAAS)」も,Data Center 3.0を実現する製品の一つだ。Data Center 3.0は,企業が持つデータを一カ所に統合して一元管理することを目指している。WAASを導入すれば,遠隔地のオフィスからでも,LANと同じようにアプリケーションを利用できる。それにより,拠点に分散していたアプリケーションやデータを,データセンターに統合できるのだ。ユーザー企業は,当社のネットワーク機器への機能追加で,WANの最適化を実現できる。過去の投資を保護しながら,新しいデータセンター環境に移行が可能だ。

大幅な消費電力削減を目指した“グリーン・データセンター”に,日本でも注目が集まっている

 Ciscoはグリーン・データセンターの構築には非常に力を入れている。まず,データセンターを構成する製品の省電力化にはこれまで継続的に取り組んできた。当社のネットワーク・スイッチ製品Catalystは,99年に比べると80%近くの消費電力を削減している。コンポーネントの消費電力の削減には,今後も力を入れていく。

 もう一つ,ソリューションの観点からも,グリーン・データセンターに貢献していく。データセンターの電力消費のうち,ネットワーク機器が占める割合はそれほど大きくない。だが,当社のソリューションを使って仮想化を進めれば,データセンターの消費電力の大部分を占めるストレージやサーバーの消費電力を削減できる。これも,当社が提供するData Center 3.0の価値だ。