セキュリティ対策に力を入れる企業が増える中,暗号鍵管理の重要性が高まっている。それを背景に,通信データや文書ファイルの暗号化に必要な暗号鍵管理製品を提供する英nCipherが,日本市場に力を入れ始めた。同社でマーケティングを担当するリチャード・モールズ バイスプレジデントに,今後の戦略を聞いた。


写真●英nCipherのリチャード・モールス バイスプレジデント マーケティング
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日本でも暗号化技術を使ったセキュリティ対策技術は普及し始めている。日本市場をどう見ているか。

 データの暗号化については,広く浸透している。オンライン・バンキングなどで使われているSSLなどがよい例だ。データベースに登録したデータの暗号化や,ノートPCに搭載されたハードディスクの暗号化など,セキュリティ対策の一環として暗号化技術に取り組むケースは多い。従来,暗号化技術に無縁だった企業も暗号化技術を使う傾向が強まるだろう。

それはなぜか。

 これまでは政府や銀行などによる取り組みが強化され,その影響が企業にも及ぶ。たとえば大手クレジットカード会社が取り決めたセキュリティ対策の基準「PCIデータセキュリティ基準」は,クレジットカード情報を取り扱う企業にセキュリティ対策の徹底を求めるもの。小売業の企業であっても,クレジットカードを取り扱うのであれば,高い水準の対策を実施しなくてはならなくなる。暗号化製品のニーズはますます高まるだろう。

暗号化製品を手がけるベンダーは数多い。その中で,nCipherはどのように存在感を高めていくのか。

 これからは,暗号鍵の管理が大きな問題になるのではないかと考えている。機密情報をいくら暗号化しても,暗号鍵が盗まれてしまったら,元も子もなくなってしまう。当社は暗号鍵を管理する製品を手がけている。データを暗号化することと同じように,暗号鍵の管理が非常に重要であることを訴えたい。

日本企業の暗号鍵管理の現状をどうみているか。

 認知度はまだまだだ。欧米企業に比べて遅れている。暗号化製品を導入していても,データベースの暗号化,文書ファイルの暗号化,ハードディスクの暗号化と,個別の製品を使っている企業が多い。現状では,暗号化製品の多くは最低限の鍵管理機能しか持っていないため,複数の製品を使うと,管理が煩雑になってしまう。当社は,そのような暗号化製品で使われている暗号鍵を集中的に管理する製品を提供する。

具体的には,日本市場にどのようにアプローチしていくのか。

 まず,体制を見直す。これまで日本事務所は単なる販売拠点だったが,技術サポートなども手がけるために人員を増やし,組織を強化する。また,技術パートナとの連携を強めていこうと考えている。例えばデータベース管理ソフトは暗号化機能を備えているが,鍵管理機能は十分とは言えない。そこで,IBMやオラクル,マイクロソフトなどと協議し,技術面で協力する可能性を探っている。また,ストレージ・ベンダーなどとも同様の協議をしている。