「ビル・ゲイツの後継者」が、日本のメディアに初めて口を開いた。米マイクロソフトで、ビル・ゲイツ会長からCSA(チーフ・ソフトウエア・アーキテクト)の任を引き継いだレイ・オジー氏は、マイクロソフトが推進中の「ソフトウエア+サービス戦略」立案の責任者。今後のマイクロソフトの針路を決める、最重要人物である。

写真●チーフ・ソフトウエア・アーキテクト レイ・オジー氏
米マイクロソフトのチーフ・ソフトウエア・アーキテクトを務めるレイ・オジー氏
(写真:ウォーラーズ和子)

 「ゲイツ氏の後を継ぐことへのプレッシャー?全くありません」。記者が問うと、レイ・オジー氏はこう即答した。ビル・ゲイツ会長は2008年7月に経営の一線を退くと発表。これに先だってゲイツ会長は、チーフ・ソフトウエア・アーキテクト(CSA)の肩書きをオジー氏に譲った。そのことへの感想を聞いた返答である。

 オジー氏がマイクロソフトに入社したのは2005年3月。自身が設立したグルーブ・ネットワークスがマイクロソフトに買収され、それに伴ってオジー氏も移った。「ノーツの父、マイクロソフトへ」などと話題になった。

 オジー氏は1997年にグルーブ・ネットワークスを創設し、ピア・ツー・ピア型グループウエア「Groove」を開発した。Grooveは現在、「2007 Office system」の一製品となっている。となるとオジー氏が一番気に入っている製品は、やはりGrooveなのだろうか。

 「マイクロソフト製品の中で一番のお気に入りはGrooveかって?いえいえ(笑)、とてもそうは言えません。今、最も気に入っているのはWindows Mobileのガジェット(デジタル機器)ですね」。オジー氏はこう答えると、胸のポケットからWindows Mobileのスマートフォンを取り出し、操作しながら話し始めた。「私は新し物好きなんです。Windowsモバイルは次々に新しい形、小さなサイズの製品が出てきます。キーボードがあったりタッチスクリーンを備えていたりと、様々な製品を使い比べていると、とても楽しいですね」。

写真●チーフ・ソフトウエア・アーキテクト レイ・オジー氏
チーフ・ソフトウエア・アーキテクト レイ・オジー氏
(写真:ウォーラーズ和子)

 マイクロソフトにおけるオジー氏のミッションは、「ソフトウエア+サービス戦略」の推進にある。同戦略の実現に必要なアーキテクチャの設計、基盤となるソフトウエアやサービスの開発などに、責任を持つ立場である。サービス化についてオジー氏は、「マイクロソフトだけでなく、IT業界全体が直面しつつある問題であり、私がマイクロソフトに入社して以来、ほとんどの時間を費やして取り組んできた課題」と語る。

 オジー氏は去る7月末に開催した金融アナリスト向け説明会で、「ソフトウエア+サービス戦略」のアーキテクチャを初披露した。今後はマイクロソフトの各事業部門に対して、製品の設計や関連技術の開発など、このアーキテクチャに沿った製品開発をガイドしていく。

 「私にとって一番うれしいのは、自分が手掛けた製品が人々の生活や仕事の役に立っていると実感できることです。その点で、マイクロソフトは、私がこれまで経験した中で、最も大きな機会を与えてくれる企業です。とにかくスケールが大きい。さまざまな仕事に携わることができます。正直言って、時間がいくらあっても足りません」。オジー氏は、こう言って笑った。

 マイクロソフトの次世代戦略である「ソフトウエア+サービス戦略」の全貌をオジー氏に直撃したインタビュー内容は、日経コンピュータの9月3日号に掲載している。併せてそちらもご覧いただきたい。