写真 日本IBMの中野エバンジェリスト
写真 日本IBMの中野エバンジェリスト
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 IBMはハイエンド・サーバー向けのプロセサの最新版「POWER6」を開発し、UNIXサーバーの「System p」やミッドレンジ・サーバーの「System i」へと搭載し始めている。このPOWER6の特徴の一つが、10進数の浮動小数点演算のハードウエア処理を採用したこと。日本IBMのサーバー製品エバンジェリストである中野淳氏にそのメリットについて聞いた。

どういったユーザーにメリットが大きいのか。

 金銭勘定や料金請求など、高い精度が求められる10進数の計算を多用するユーザーだろう。例えば、金融機関やサービス事業者がこれに当てはまる。

従来のプロセサによる処理との違いは。

 POWER6は10進数の浮動小数点を演算する回路を新たに追加することで、プロセサだけでネイティブに高速処理できるようになった。これは業界初の取り組みだ。

 従来は、アプリケーション側で演算をエミュレーションすることで精度を保っていた。人間に例えて言うならば、計算機を使わずに筆算をするようなものだ。

 処理する内容や実装によって異なるが、パフォーマンスの大幅な向上が見込まれる。

どの程度向上するのか、教えてほしい。

 例えば、個々の演算で見ると、足し算で210~560倍、かけ算で40~190倍、処理速度が向上する。

 実際のアプリケーションでは、IBM側で2~7倍のパフォーマンス向上を確認している。例えば、7倍の結果が得られたベンチマークでは、ファイルから100万回の通話記録を読み込み、料金と税金の計算後に明細書を印刷した。

対応するOSやアプリケーションやが出そろうまでに時間がかかるのではないか。

 そうではない。既に対応しているOSやアプリケーケーション開発環境がある。10進数の浮動小数点の処理はIEEEなどで定めている業界標準であるからだ。

 例えばOSは、AIX、SUSEやRed HatのLinuxが特定のバージョン以降で対応している。

 その上で稼働するアプリケーケーションの開発/実行環境も同様だ。例えば、前述の7倍速度が向上したアプリケーケーションはJavaで開発している。具体的には、Javaの「BigDecimal」というクラスを使っている。C言語についても、対応するライブラリと再リンクすることで利用できる。このほか、独SAPのミドルウエア「NetWeaver」も対応している。