これからのITは顧客重視がさらに高まる。この要求に応えるためには今まで以上にリアルタイム性が重要になる。そこで重要になるのがNGNやSOA(サービス指向アーキテクチャ)、Web2.0などの技術や潮流だ。財務省情報化統括責任者(CIO)補佐官と内閣官房IT担当室電子政府推進管理(GPMO)補佐官を兼務する座間氏の主張は明快だ。

ガートナージャパン コンサルティング バイス・プレジデント 座間敏如氏
写真●ガートナージャパン コンサルティング バイス・プレジデント 座間敏如氏

 2.0世代と呼ばれるNGN、SOA、Web2.0などの新たなアーキテクチャの潮流は、単純な既存技術の発展形ではなく、新しいビジネス上の要求に対応すべく生まれた技術上の概念だと考えることができる。ここでいう新たな要求とは顧客志向であり、リアルタイム性である。

 システムはビジネスに併せて進化する必要がある。システムにはこれまで以上に「柔軟性」「信頼性」「迅速性」が求められるようになる。メインフレームからクライアント/サーバー・システム、Webシステムへの変化もこういった流れに沿って起きている部分もある。

 これらの要求をNGNやSOA、Web2.0がどのように反映するのかについて説明したい。

 本来、NGNが本来目指すべきコンセプトは、サービスがネットワークで提供される状態が生まれたとき、これを適正な価格で提供していくことにある。電話網のIP化でも単純なWANの置き換えではない。既存のインターネットの中でボトルネックになる信頼性の限界を超え、ユーザー管理、認証、サービス保証の問題まできちんと担保していくことが求められる。

 企業をまたぐときにアプリケーションだけでできることには限界がある。ユーザー管理、NGNそのものが持っている機能でどうやってこれを実現していくかだ。既存のインターネットで不可能ではないにしろ、導入までのコストと時間を削減できることのメリットは大きい。

 SOAについても、正確な理解が広がっているとは言い難い。Webサービスを言い換えたものだと思われることもあるが実態は異なる。

 ビジネス活動全体を見据えたビジネス指向で、顧客に提供する業務を1つのサービスと見なしてサービス化していく。システム部門と非システム部門で、サービスを定義しなければ方向性を間違う。サービスの粒度をどう設定するかが重要だ。

 SOAを実装する際に参考になるものの1つにエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)がある。EAとは組織全体のビジネス、システム、データ、基本的戦略と業務を包含した一つのフレームワークとして可視化したものだ。現状と将来を可視化して、どんなシステムが必要かを考える。

 SOAを採用する際には、全体最適の観点からあるべき姿への移行形態を想定しておくことが重要だ。また過度な疎結合はビジネスに対するリスクが大きい。共通化すべきはビジネスに関する知識や経験である。

 Web2.0は単なるポータルサイト化の話ではない。重厚長大なミドルウエアではなく、クライアント側にあるアプリケーションを使って、いかにシステム連携を図っていくか、データをどう継承していくかということである。

 従来は、ミドルウエアを使ってシステム間連携していたものが、Web2.0の世界ではマッシュアップによって可能になる。各コンポーネントのAPIを公開すればよい。

 一昔前のエンドユーザーコンピューティングが発展したものと考えることもできる。当時はエクセルなどデスクトップのツールを使っていたものが、Webを通じたサービスにに変わったわけだ。部品は1企業内で全部作る必要はない。パートナーとして信頼できる企業のものを使ってもよい。

 コンシューマライゼーションの流れも、企業にWeb2.0の技術を採用するよう働きかける可能性がある。この動向を無視ばかりしていると、情報システム部門はユーザー管理ばかりに熱心な、硬直的で役に立たない部門だと思われかねない。

 もちろん企業がWeb2.0を利用する上では課題もある。セキュリティやエンドトゥーエンドでの信頼性、サービス提供者の制御、プライバシーと利便性のバランスなどについて考える必要がある。現時点では、最終消費者の利益をどう担保するのかについては、まだ明確な指標がない状態だ。NGNの提供するサービスなどを組み合わせて考える必要があるのかもしれない。

 時間はかかるが、古い制約を打ち破り、テクノロジーを利用して作業の方法を変えるには、不断の努力に加え新しい世代の考え方を取り入れることが必要だ。

【注】本記事は、2007年9月13日の「ITガバナンス2007」での座間氏の講演「2.0世代の情報システムとビジネスモデル」の内容をまとめたものである。