「Nexaweb(ネクサウェブ)」は米Nexaweb Technologiesが開発・販売するリッチクライアント製品の一つである(注12005年に日本法人を開設し,三菱東京UFJ銀行など国内の大企業での採用も増えてきた。来日したクリス・ハイデルベルガー氏(米本社 CEO)に,リッチクライアントの潮流などを聞いた。

米Nexaweb Technologies CEO クリス・ハイデルベルガー氏
米Nexaweb Technologies CEO クリス・ハイデルベルガー氏
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リッチクライアントの製品やフレームワークはいくつもある。Nexawebはほかと何が違うのか。

 Nexawebはミッション・クリティカルなシステムで使うための製品だ。他のリッチクライアント製品やフレームワークが持つ画面の使い勝手や非同期通信ができるのはもちろんだが,システムの信頼性を高めたり,性能を向上させたりするのに役立つ機能が充実している。

 市場環境は我々に追い風だ。GoogleマップやGoogle Earthのようなリッチなサービスがリリースされたことで,コンシューマ市場はWebブラウザの機能について可能性の広がりを感じている。ユーザーの関心は次にビジネス市場に向かう。Nexawebは信頼性が求められる複雑な基幹システムでの導入実績が既にいくつもある。

基幹システムで使うために必要な機能とは何か。

 例えば,汎用的な言語で画面やロジックをプログラミングできることが,その一例だ。具体的には,JavaScript/XMLまたはJava/XMLを使う。FlashやCurlは独自のスクリプト言語を覚える必要があるが,Nexawebではその必要がない(注2

 クライアント側の言語対応は今後も充実させていく。今いくつかのモバイル開発案件が進んでいる。それらの要件を整理して製品化する。モバイル向けの製品は2008年第2四半期には,何らかのものをリリースできるだろう。

 また,クライアントとサーバー間の通信を制御する機能が充実している。サーバーからのプッシュ,クライアントとサーバー間のXML同期,到達順序保証/到達確認,キューあふれ制御などの機能がある(注3Ajaxで一から開発する場合は,このような機能は別の技術や製品を使って実装しなければならない。さらに,サーバー側のモジュールは,データ・バインディングやクラスタリングの機能を備えている。開発環境も充実している。「Eclipse」ベースの開発環境「Nexaweb Studio」を用意している。

どういう用途での導入実績が多いのか。

 ワールドワイドで5000サーバーへの導入実績がある。実は,そのうちの4000サーバーは,EMCへのOEM(相手先ブランドでの生産)だ。EMCが開発・販売するストレージ運用管理ソフトウエア「ControlCenter」などにNexawebが組み込まれている(注4

 パッケージ・ソフトウエアへのOEM供給は今後も増えるだろう。SaaS(Software as a Service)が普及していく中で,ネット環境でもクライアントの操作性を犠牲にしたくないというニーズがある。例えば,Sungardというソフトウエア会社がNexawebを採用している。これまではパッケージ・ソフトウエアを販売してきたが,ネット上で提供するサービスに切り替えて収益を上げている。

 ユーザー企業が直接導入するケースとしては,セールス情報管理システムやトレーディング・システムでミッション・クリティカルなシステムにおける採用の実績がある。ユーザー企業に対してはSI(システム・インテグレータ)を通じて,販売する(注5

注1
 リッチクライアントとは,HTMLだけで実装したWebブラウザ・ベースのクライアントに比べ,使い勝手などを豊か(リッチ)にしたクライアント・アプリケーション。実装方式にもよるが,一般的には「キーを自由に割り当てられる」「レイアウトやデザインの自由度が高い」「オフラインで作業できる」「クライアント側でロジックを実行できる」「オブジェクト単位でサーバーと通信できる」といったことが,HTMLに比べたメリット。
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注2
 Nexawebはクライアント側に実行環境「Nexaweb Client」を配置し,その上で画面やロジックを記述した実行ファイルを動作させるという仕組みになっている。クライアント側の実行環境は3種類から選べる。それぞれ下記のような関係になる。

実行環境 実行ファイル
JavaVM+Javaアプレット Java/XML
Javaアプリケーション Java/XML
Ajaxフレームワーク JavaScript/XML
Ajaxフレームワーク用に書いたJavaScriptを除き,実行ファイルはどの実行環境とも互換性がある。
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注3
 リッチクライアント製品には,(1)JavaScript型(「Ajax」など),(2)プラグイン+サーバー型,(3)プラグイン型(「Flash(アドビシステムズ)」「Curl(カール)」など),(4)インストール型(「Adobe AIR(アドビシステムズ)」など)という四つのタイプがあり,それぞれ一長一短がある。このうち(2)は,サーバー側にクライアントと通信するためのモジュールを置くため,通信を制御できる。(2)に属する製品としては,Nexawebのほかに「Adobe Flex(アドビシステムズ)」などがある
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注4
 パッケージ・ソフトウエアでの採用は多い。「資金証券システム」(日本電子計算),「TeamQuest Performance Software」(TeamQuest),「Risk Knowledge」(三井情報)などがNexawebを製品に組み込んでいる。
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注5
 国内では,日立システムアンドサービス,三菱電機コントロールソフトウェア,TIS,日本総研ソリューションズ,グローバルエーインフォメーションの5社がSIパートナとなっている。
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