米国のIT調査会社フォレスター・リサーチのアナリスト、ケリー・ボディーン(Kerry Bodine)氏が来日。これからの企業サイトのあり方について話した。

図のタイトル
米フォレスター・リサーチのプリンシパルアナリストであるケリー・ボディーン(Kerry Bodine)氏

米国でのインターネットの活用状況について、最近のトレンドを教えてください。

 日本ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のミクシィが人気のようですね。米国でもSNSは人気ですが、顕著なのはユーザーの若年齢化です。12~17歳で60%、18~21歳は80%が利用しているといわれています。18歳以上の世代のトータルでは30%ですから若年層がいかにSNSを利用しているかが分かるでしょう。若い人ほど利用頻度は高くなるという傾向もあります。

 興味深いのはミクシィの独り勝ちが続く日本と違って、米国ではFriendsterMySpaceFaceBookと次々に人気のあるSNSサイトが入れ替わってきたことです。FaceBookの人気だっていつまでも続くとは限りません。SNSではありませんが、静止画像の投稿サイトのFlickrも人気がありますね。YouTubeは一部の人だけが投稿し、大部分の人は見るだけです。Flickrはより気軽に投稿できるものです。

企業サイトでは、どんなトレンドがあるのでしょうか。

 従来は「useful」(役に立つ)、「usable」(使いやすい)という概念がウェブ構築の中心にありました。前者は「価値の提供」、後者は「提供する価値への簡単なアクセス」を指します。企業サイトの目的が、会社概要や製品・サービスの紹介にあったからです。または買い物や金融サービス、各種予約といったトランザクションです。こうした場合はあくまで利便性が求められます。

 でも最初に述べたようにより幅広い世代がウェブにアクセスするようになり、企業サイトも「desirable」(望ましい)ものでなけばならなくっています。desirableとは「感情へのアピール」ということです。例えば、スポーツブランドのナイキのサイトなどはdesirableを意識したものになっています。女性向けのページにおいて、ダンスビデオの動画などが多くあります。単純な商品の紹介を中心にしたe-コマースではなく、顧客の気持ちをかきたてることに力点が置かれています。

 ナイキの場合、R/GAというデザインエージェンシーがサイト構築に協力しています。米国の企業では、デザインエージェンシーがより大きな役割を果たしています。desirableなサイトを作るのにも長けています。フィデリティのように自社のスタッフだけでdisirableなサイトを構築する企業もありますが、少数派です。時間とお金を相当投資しなければなりません。

desirableなサイトを実現するためにはどうすればよいのでしょうか。

 顧客はインターネットのおかげでたくさんの情報にアクセスできるようになり、商品やサービスの購入に際して非常に数多くの選択肢を手にするようになっています。一つひとつのブランドのロイヤルティ(忠誠心)は相対的に落ち込んでいます。テレビCMの影響力も録画してスキップという行為が蔓延すると低下し続けるでしょう。マーケッターは、これまでよりも新規顧客の獲得に苦しむことになります。これからのサイトがdesirableであるべきなのは、そのほうがより理想的なカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を実現できるからです。

 desirableなサイトの構築には様々な手段があります。重要なものの1つが、「ペルソナ」という架空の顧客を構築するものです。顧客のセグメンテーションだけでは、顧客のエクスペリエンスを想像するには限界があります。顧客数人へのインタビューなどの調査に基づいて、詳細なプロフィルが設定したペルソナを作ることです。そのペルソナの視点でサイトをデザインするという手法はかなり広まっています。先ほど話したフィデリティやデル、ベストバイが買収したGeeksquadなどもペルソナを使い、desirableなサイトを構築しています。

■変更履歴
Bodine氏の日本語表記を当初「ボーディン氏」としていましたが「ボディーン氏」に修正しました。また最終段落で,社名「ベストベイ」を「ベストバイ」に修正しました。お詫びして訂正します。 [2007/09/06 13:15]