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写真 三菱UFJ証券の市場商品本部でスパコン開発に携わった、(左から)佐々木部長代理、伊藤課長代理、谷口IT開発課長、田中部長代理
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三菱UFJ証券がブレード・サーバーで構築したスーパーコンピュータは、世界のスパコン性能を集計しているTOP500の最新ランクで193位となった(関連記事)。448枚のブレードで構築したシステムの測定性能値は、6.52テラFLOPS。これは、日本の会社/機関では15位、世界の金融機関では2位となる性能だ。その一方で投資額は10億円以内と見られ、大幅に抑えている。同社でスパコンの導入を率いた市場商品本部研究開発部の谷口肇IT開発課長に聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コンピュータ)

日本の民間企業のシステムがランク入りしたことや、IAベースのブレード・サーバーである点に注目が集まっている。

 当社のビジネスで今後必要と考える演算能力を見積もったところ、今回構築したスペックとなった。それが結果として、TOP500にランク入りするレベルだったというのが実際のところだ。ブレード・サーバーも従来のシステムから使っていた。

本当にTOP500にランクされるような性能のスパコンが必要なのか。

 大きく2つの理由で高い計算能力が求められている。

 1つは他の金融機関にも言えることだが、年々モデル式が複雑化している。昔は簡単な式で算出していたが、今はそうではない。2つめは当社が三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)全体のデリバティブを一手に引き受けていることだ。処理量が極めて大きい。

 今回構築するスパコンは、金融派生商品であるデリバティブのリスクを算出するのが最大の目的だ。デリバティブは、株式と違って「値段がない」のが特徴だ。例えば、市場が大きく動いた際、我々が持つデリバティブ全体のリスクを1、2時間ではじき出して見通せるようにしたい。従来のシステムでは実用的な時間で算出できなかった。

 結果が出るまで1週間かかるような計算も実行する。緊急を要するデリバティブ計算が入ってきたら止めるといった運用を考えている。

OSは、IAサーバーのスパコンで一般的なLinuxでなくWindowsを採用した。また、64ビット化も可能だが、32ビットでシステムを構築している。

 現在の我々の環境からすると、自然な流れだ。

 計算で使うモデル式を、Windowsの32ビット・アプリケーションで開発している。そこで、実行する環境もWindowsベースかつ32ビットのほうが相性がいいと考えた。また、アプリケーションを開発しやすくするため、当社独自のソフトウエア・プラットフォームを構築している。複数のサーバーに計算を依頼し、結果をまとめるといった役目を持つものだ。これはあるベンダーのミドルウエアをベースにしている。

 TOP500への応募ではOS/クラスタ・システムとして「Windows Compute Cluster Server 2003」を採用したが、実システムの稼働時には「Windows Server 2003」を搭載する予定だ。

11月に公表する次のTOP500で、さらに上位を狙うのか。

 現時点では予定はない。今年度中に稼働させたいと考えているため、その時期は実稼働に向けた構築に入っている。TOP500に向けたチューニングに作業を振り向けられない。