「利用者参加を可能にするWeb2.0の技術は企業に大きな影響を与える。ただ一般消費者ではなく企業が利用する場合には、可用性やセキュリティといった新たな課題を解決する必要がある」米BEAシステムズでWeb2.0関連ソフトのマーケティングにかかわるジェイ・サイモンズ氏はこう言い切る。(聞き手は中村 建助)

BEAはWeb2.0の技術を取り入れた製品を相次いで出荷している。

米BEAシステムズのジェイ・サイモンズ氏
写真●米BEAシステムズのジェイ・サイモンズ氏

 ポータル作成を可能にするAquaLogic Pagesと我々が「マッシュアップ・エンジン」と呼ぶAquaLogic Ensemble、検索エンジンのAquaLogic Pathwaysの3種類がある。いずれも複数の人間がアプリケーションを作る“コラボレイティブ・フレームワーク”を取り入れたものだ。

消費者向けのネット・サービスは興味深い

 消費者向けの新しいWebのサービスを観察した結果、こういった製品が企業内のコラボレーションにも有用だと判断した。一般社員だけでなくIT部門の開発者の生産性と効率を改善することが可能だと考えている。

 我々は「エンタープライズ・ソーシャルコンピューティング」と読んでいる。2年前から、これらのソフトの開発を進めてきた。

すでに企業はノーツやExchangeといったコラボレーションのためのグループウエアを導入している。

 既存のグループウエアに取って代わるものではなく、これらのソフトを統合するものだ。例えば、AquaLogic Pagesを使えば、一つの画面の中にノーツやExchangeの情報を表示することができる。

 単なるEIP(企業情報ポータル)とも違う。ナレッジ・マネジメントの仕組みも組み込んでいる。

共通する特徴はあるのか。

 一般の社員が簡単に使えることだろう。認証などをきちんと実施して、セキュアな環境を実現した上で、外部のサービスを含めてマッシュアップしたアプリケーションやデータを簡単に利用できる。

どういった製品と競合するのか。

 1つはIBMの提供するソフト。ブログやWikiなど消費者向けのサービスとして登場したものも今後は競合になるかもしれない。ただソーシャル・ブックマークの機能に関しては他社をしばらくは寄せ付けないのではないか。またAquaLogic Ensembleについては、あえて言うなら手作りのコードとライバルになるだろう。

配信の方法は様々、グーグルとは協業している

アイデアの基となった消費者向けのサービスを提供する企業や米グーグルと競合する可能性がある。

 グーグルとは協業している。グーグルの提供しているGoogle Appsは主に中小企業が利用している。大企業が利用する場合は、他の情報システムとの複雑な統合が必要になる。ここはBEAの得意なところだ。それからセキュリティのほか、ERP(統合基幹業務システム)、HR(人事管理)、グループウエアといった分野もあまりグーグルの強い分野ではない。

Web2.0関連の製品については、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を採用することを考えないのか。

 いろいろな方法を考えている。SaaSや伝統的なソフトの販売、あるいはアプライアンスのようなものも検討している。

 ただ当社が提供するソフトは、社内の様々なシステムのデータを統合して利用する。セールスフォース・ドットコムのように、すべてのデータを社外で管理するわけではないので、SaaSで提供するのは少し難しいのではないか。

Web2.0の技術は、企業向けにはまだ時期尚早だという見方も強い。

 そういう見方があることは知っているが、すでに北米では製品を購入した企業もある。若い頃からネットに馴染んだ社員が増えていくれば、どんどん状況は変わってくるだろう。

 エンタープライズ・ソーシャルコンピューティング関連の製品は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)やBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)と並ぶ当社にとっての3本の柱の1つだ。数年で急速に伸びると考えている。

■変更履歴
ジェイ・サイモンズ氏の肩書きを当初、ビジネス・インテグレーション部門プロダクトマーケティング担当シニアディレクターとしていましたが、同部門マーケティング担当バイスプレジデントに修正しました。[2007/09/03 20:00]