サーバー資源のインベントリ調査とプロビジョニングによってデータ・センターの運営を最適化する---。このためのソフトウエアを開発しているベンダーが,カナダのPlateSpinである。国内ではネットワールドが,2003年12月にプロビジョニングの「PowerConvert」,2006年4月にインベントリ調査の「PowerRecon」を出荷した。

 PowerReconは,CPU負荷やメモリー使用量などサーバー機のインベントリ情報を管理するソフト。一方のPowerConvertは,物理サーバーや仮想サーバーを問わず,サーバー機上で動作するOSとアプリケーションをイメージ・ファイルの形で管理し,モビリティ(可搬性)を与えるソフト。PowerReconを用いてサーバー資源の配置計画を立案し,PowerConvertによって実際にイメージを移動/配置する。

 この7月に両者の新版を市場に投入したPlateSpinの出資者兼CEO(最高経営責任者)であるStephen Pollack氏に,同社のソフトウエアの機能やメリットについて聞いた。



カナダPlateSpinの出資者兼CEO(最高経営責任者)であるStephen Pollack氏
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7月に市場に投入した新版, PowerRecon 3.0とPowerConvert 6.6において,新しくなった点は何か。

 我々は,ユーザーがデータ・センターをどう運用しているのかを調査してきた。これにより,データ・センター運用に対する理解を深めることができた。従来のユーザーは,2年に1回といった長期スパンでデータ・センターの資源配置を計画していればよかったが,現在では日々の変更が必要になっている。

 こうした理由で,まず,資源の再配置の計画と実行を日々運用できるよう,PowerReconとPowerConvertの連携を強化した。従来版では,PowerReconが生成したレポートをシステム管理者が読み,その後でPowerConvertを使ってアクションを起こしていた。途中に人が介在していたのだ。これに対して新版では,PowerReconが立案した計画に基づいてPowerConvertを自動実行できるようにした。中間ステップを排除することで,システム管理負荷が低減できると同時に,オペレーションの間違いが減る。

 PowerReconには,これまでのトレンド(動向)をベースとした予測機能を新たに付与した。あるサーバーがどういったペースでどれだけの資源を必要とするようになるのかを自動的に予測し,予測に基付いたサーバー資源の再配置計画を立案する。また,データ・センターの最重要課題である発熱問題に対処できるよう,サーバー統合時における電源機能/冷却機能/空間といった情報も分析できるようにした。

 PowerConvertでは,サーバー機のバックアップ/リカバリ用機能を強化した。PowerConvertは,計画的再配置や容量設計といったプロビジョニングのためのツールだが,バックアップ/リカバリに応用したいという需要は大きく,このための機能が求められていた。ある業務サーバー機を停止することなく遠隔地にバックアップし,システム障害時にリストアするといった使い方が可能だ。

仮想サーバーだけでなく物理サーバーも管理対象にしている理由は何か。物理サーバーを仮想サーバーに移行してしまえば,容量設計やプロビジョニングといった作業そのものを低減できるのではないか。

 ユーザーは,すべてを仮想サーバーに移行できるとは考えていない。さらに,PowerReconとPowerConvertを使えば,すべてを仮想サーバーに移行するという選択を先延ばしにすることができる。物理サーバーと仮想サーバーを混在させた環境でも,配置計画の立案やプロビジョニングが可能だからだ。

 例えば,プロビジョニングの観点で言うと,PowerConvertは,サーバー・イメージの抽出対象が物理サーバー機であっても仮想サーバー機であっても,共通かつ単一のサーバー・イメージを生成して管理できる。抽出したサーバー・イメージは,IntelアーキテクチャのPCであれば,どんなハードウエアでも展開可能だ。米IBMのサーバー機でも,米Hewlett-Packardのサーバー機でも,米VMwareの仮想サーバー機でも,何でもよい。

 サポートできている仮想化ソフトは,2007年8月現在は,VMware,Microsoft Virtual Server,Xen,VirtualIronの4種類だが,米SWsoftの製品やSWsoft傘下の米Parallelsの製品も追加する。ハードウエアがIntelアーキテクチャでありさえすれば,物理サーバーのデバイス・ドライバが何であれ,仮想サーバー・ソフトが何であれ,どのようなプラットフォームであってもサポートしていく。

仮想化ソフトにとって,負荷分散などサーバー資源の動的再配置は基本機能だ。インベントリ情報を取得するPowerReconとPowerConvertならではの利点は何か。

 サーバー仮想化ソフトが備えているサーバー資源の動的配置機能は,何か問題が起こってから行動を起こすというものがほとんど。ある仮想サーバーの負荷が急激に高まったために,サーバー仮想化ソフトを動作させている物理サーバー間の負荷の差が大きくなって初めて仮想サーバーに割り当てる資源を変更する。これに対して,PowerReconとPowerConvertの組み合わせでは,問題が起こる前に,起こるべき問題を事前に予測して行動を起こすことが可能だ。これにより,問題そのものを起こさない運用が可能になる。