シスコシステムズ 取締役 常務執行役員 堤 浩幸氏
シスコシステムズ
取締役 常務執行役員
堤 浩幸氏

 世界最大手のネットワーク関連機器プロバイダであるシスコシステムズ(以下、シスコ)。同社では、今後のNGN時代に向け、オールIPに基づくエンドツーエンドのソリューションを提供する「IP NGN」戦略を推進している。インフラ、サービス、アプリケーションの各レイヤの統合により、ネットワークの新たな付加価値の創造を目指している。同社のIP NGNへの取り組みを、取締役 常務執行役員の堤浩幸氏に聞いた。

シスコのNGN戦略とは、どのようなものか。

 シスコでは、NGNをインフラの観点だけではなく、サービスレイヤやアプリケーションレイヤをも踏まえた形で捉えている。要するに、ネットワークレイヤ、サービスレイヤ、アプリケーションレイヤの3層を統合、各レイヤを連携させることにより、ユーザーに向けたネットワークの新たな付加価値というものを創造してくというのが、シスコのNGNに対する考え方である。

 2005年11月にシスコでは、米国の大手セットトップボックスメーカーであり、ネットワークでの映像配信や映像システムインテグレーションといったサービスを展開するサイエンティフィック アトランタ(Scientific Atlanta)社を買収しているが、そうした取り組みも、まさにIP NGNの推進に向けて重要な意義を持つものだ。日本においても2007年6月1日からすでに、サイエンティフィック アトランタの事業がシスコのサービスプロバイダ(SP)向けのサービスに組み込まれているが、その中で我々としては、通信と映像を融合したエンドツーエンドの新たなソリューションの展開を進めている。このような取り組みは、シスコがSPのネットワークインフラの次世代化だけではなく、企業のビジネスのすすめ方、さらには家庭におけるネットワークの使い方までを包括的に変えていこうという試みの一環である。

NGNが社会にもたらす変化とは。

 ユビキタスの実現、いつでも、どこでも、だれとでも簡単にコミュニケーションできるという環境が整いその上で、加入者のパーソナル化や映像等のリアリティを提供するアプリケーションの活用が広がっていくであろう。このグローバルレベルでの真のユビキタス実現のためには、日本という国だけではなく、世界規模でのNGNへの取り組みが必要である。その意味においては、シスコの世界各国のサービスプロバイダとの実績が非常に重要となっている。サービス、アプリケーションと融合しネットワーク全体の付加価値を高めること、そして、NGNを基盤とした具体的なサービスを、企業や家庭に提供するサービスプロバイダを全面的に支援すること、それがNGN推進のために重要であると考える。

 一つの具体例として、シスコが提供する会議システム「Cisco TelePresence(テレプレゼンス)」がある。IP NGNの展開に伴って、企業が利用することのできるサービスへの我々のスタンスを示す象徴的な取り組みであるといえる。

 Cisco TelePresenceは、大画面のプラズマディスプレイにCall Managerを組み合わせることで、これまでにないきわめて高品質な音声と映像、そしてデータ通信を統合したユニファイド コミュニケーションを実現するソリューションであり、企業の遠隔地にある拠点同士を結んだ会議やコラボレーションにおいて、実際の対面コミュニケーションと同等の高度なリアリティを提供するものである。サービスプロバイダによるNGN環境の提供によってこのソリューションの企業への展開が加速される。

NGNに対する取り組みにおいて日本が果たすべき役割をどのようにとらえているか。

 日本は国際的に見てもブロードバンドネットワークの最先進国だ。100Mbpsの回線が各家庭にまできているという国は他にはなく、ネットワークインフラの整備状況に関して圧倒的なアドバンテージを持っているといえる。日本は今後のNGNの分野をリードするための大きな潜在能力を有している。またNGNの実現は日本経済の活性化にも大きく貢献するはずだ。シスコでもそうした観点に立って、さらにビジネスを加速していきたいと考えている。